クラフトワーク「電卓」から発見したJBのファンク 鳥居真道が徹底考察

アウトバーンのジャケに鳥居真道の字面をひっかけたパロディ画像


それではなぜ「電卓」を聴いてその構造に気がつくことができたのか。

それはシンセという楽器に対する解像度が低かったからだと思われます。今でもそうですが、シンセという楽器が肌感覚として理解できずにいます。ギターであれば、少し聴いたらこれは箱物だとか、シングルコイルだとか、ダイナコンプを使ってる、指で弾いてるだとかいったことがある程度わかります。しかし、シンセの場合はそれがシンセであることしかわかりません。すなわち、楽器の音にピントを合わすことができないため、自ずとズームアウトすることになります。このことで俯瞰的に視点が得られ、アレンジ全体の構造を見渡すことができたのです。



JBの伝記映画『ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男~』ではこんなシーンがあります。JBがミュージシャンを集めて曲作りをしているときに、サックス奏者のメイシオが他のパートに文句をつけるのでカチンときます。ドラムセットに歩み寄り、スネアを叩きながらJBは彼に問います。

「これは何だ」
「スネアですが?」
「つまり?」
「ドラムです」

ギターを指差し同じ質問をするとメイシオは「ギターです」と答えます。隣にいたピーウィーに同じ質問してみると、彼は「ドラムですか?」と答えます。

「では、メイシオの持っているのは?」
「ドラムです」

最後にJBが「お前らが持ってるその金ピカの楽器は何だ?」と尋ねると一同は「ドラムです」と答えます。そしてこう言うのです。

「俺たちは今全員でドラムを演奏している。キーがどうとか小節がどうとか惑星がどうとか知ったこっちゃない」

この映画を観たのは今回の話よりも後のことですが、妙に腑に落ちるところがありました。というのもクラフトワークの「全員シンセ」によってJBの「全員ドラム」の概念がぼんやりとインストールされていからでしょう。

また、クラフトワークの自らをロボットに模した機械的でクールな振る舞いもJBのファンクを理解するうえでヒントになりました。やはりJBのパフォーマンスは汗まみれになりながら絶叫し、踊り狂い、終いにはステージにへたり込んで、マントをかけられるものの、それを払って再び歌い出すという非常に身体を酷使するものであります。一方で、JBが従えるバンドの演奏は熱いものもありますが、構造自体は機械的でクールなものです。溜めて溜めてどこかで感情を爆発させるといったものではなく、エンジンさながら運動エネルギーを作り出すために小さな爆発の連続させるといったものです。

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