コロナ陰謀論を叫ぶ動画投稿、TikTokで何十万回も再生

表向きの対策と実態

TikTokも表向きには誤情報撲滅を表明している。1月に新型コロナウイルスが武漢で猛威を振るっていたとき、同社はコミュニティガイドラインを改訂し、「医療措置について誤解を生じさせるなど、個人の健康に害を及ぼしうる情報」や「恐怖、憎悪、偏見の煽動を目的とした誤情報」の禁止を明言した。4月30日、TikTokの信頼安全部長はアプリに誤情報通報機能を実装した。この機能によりユーザーは、新型コロナウイルスに関連するものを含む、意図的に虚偽の情報を広めるコンテンツを通報することが出来るようになった。

それでも、コロナウイルス陰謀論は今もプラットフォーム上で蔓延し続けている。「同社には他のプラットフォームにはないポリシーがあります」と言うのは、誤情報を監視する団体Media Mattersの上級研究員アレックス・カプラン氏。「そして私が見たところ、取り締まりにはかなり苦労しているようです」 。Media Mattersも以前報告しているように、TikTokは#Filmyourhospitalというハッシュタグの温床となっていた。地元の救急病院を撮影し、病院がさほど混雑していないように見せかけ、新型コロナウイルスの影響を軽視させようとするこのハッシュタグがついた動画は13万2000回以上も再生されており、現在も同プラットフォームで使用されている。5G回線の電波塔と新型コロナウイルスの感染拡大を関連付ける陰謀論も広まっており、5Gの電波塔に火をつける様子を収めたと思しき動画もある。

特に人気な動画の一部には反ワクチンと反政府的陰謀論コンテンツの間に位置するものもある。同プラットフォームでQアノン支持者のアカウントの存在感が増したのが一因だろう。45万7000回以上再生され、1万6000以上のいいねを集めたとある動画は、マイクロソフト社が立ち上げに携わったデジタルIDプログラムID2020 Allianceの最終目標は「ワクチンを義務付けることで体内にマイクロチップを埋め込む」ことだと主張し、#fvaccinesや#billgatesといったハッシュタグがつけられている。他にも、政府が何も知らない被験者にワクチンと称してチップを埋め込もうとしている、という特に福音主義者の間で人気な陰謀論もある。一部のキリスト教徒はこれを、悪魔の印について仄めかすヨハネの黙示録での一節にちなんで「獣の刻印(Mark of the Beast)」と呼んでいる。#markofthebeastというハッシュタグがついた動画の総再生回数は230万以上にも上り、中には約1万のいいねを集めているものもある。

【画像】「ビル・ゲイツがコロナワクチンで人々を支配しようとしている」という陰謀論を信じるTikTokユーザーたち(写真)

「獣の刻印と聞くと、コロナウイルスとこれから出て来るワクチンのことをすぐに思い浮かべる。だって考えてみれば、ワクチンの中に何が入ってるかわかったもんじゃないんだよ」。以前投稿された、6万6000回以上再生されている動画であるユーザーはこう言い、ワクチンを接種するぐらいなら死んだ方がマシだと言い放った。この動画は#vaccineで検索すると上位に表示される動画のひとつ。ハッシュタグ全体の再生回数は4200万回にも上る。
--{「TikTokはYoutubeがコカインを使っているようなもの」}--

「TikTokはYoutubeがコカインを使っているようなもの」

28万5000回以上再生された別の動画は、ハッシュタグ#billgatesで検索すると上位20件に表示されるもののひとつ。COVID-19パンデミックは隠れ蓑で、(陰謀論者のお気に入り、ビル・ゲイツ氏率いる)マイクロソフト社が特許を取得した暗号通貨システムを導入し、政府によるマインドコントロールを開始しようとしている、という説を展開している。その証拠として、特許番号が666だと動画は主張している。頻繁に陰謀論コンテンツをシェアしている別のユーザーは、最近投稿した動画の中でミーガン・ジー・スタリオンの「Savage」に合わせて「ビル・ゲイツはチップを埋め込んで、監視して、ワクチンを打つつもり/殺すつもりがないなんて騙されない」と歌い、最後に「ワクチンは打つな」という警句で締めくくっている。

3月からTikTokは世界保健機関(WHO)協力の元コロナウイルス関連のコンテンツに、信頼出来るコロナ情報が掲載されているサイトへのリンクを貼ることにしたが、先の投稿にどれにもリンクは貼られていない。声明の中でTikTokのスポークスパーソンは「弊社は、ユーザーがクリエイティビティーを発揮出来る安全なアプリ環境の推進に努めています。ユーザーには関心の高い話題について会話をする際は十分に責任を持って行っていただくとお願いしていると共に、コミュニティーや社会全体を嘘や誤解で惑わせようとしていると通報があったコンテンツは削除しています」と述べた。ローリングストーン誌が発見した誤情報を吹聴する動画やそれが削除されたのかについて、また#markofthebeastや#filmyourhospitalといったハッシュタグが未だ使用されている理由についての質問への言及はなかった。

TikTokほどの規模で、世界的にユーザーを抱えるアプリなら、悪意を持った人々が誤情報を広めるのに活用するのは当然避けられない。陰謀論者がメインストリームで注目を浴びるのに絶好の機会をパンデミックが与えてしまった以上、このようなコンテンツの一部が紛れ込んでもおかしくはない。しかし、誤情報対策に努めていると力説する割には、先月アプリのダウンロード回数が2億回を突破したTikTokで、陰謀論コンテンツは決してマイナーでも、特に検索に引っかかりにくいわけでもない。周知の通りTikTokのアルゴリズムが、ユーザーが特にエンゲージしそうなコンテンツを選別していることを踏まえると、深みにはまってしまう可能性は高まるばかりだ。「YouTubeがコカインを使っているようなものです。止まるところを知らない、加速し続けるオンライン・モバイル・エンターテインメントのリズムについて行くため、より早く、より短時間で効くクスリです」とアンドレヴィッチ教授は言う。

そしてこうした状況は、誤情報撲滅を目指す監視団体から注目されぬまま進行している。このアプリが専らZ世代の無害な気晴らしだと思われているせいだ。「このようなポリシーを掲げるのであれば、内容に見合った姿勢を示していただかないと」とカプラン氏は言う。「公衆衛生に害をもたらし、最終的には人命を危険にさらす可能性もあるのですから」

【画像】隔離中の変態たちに残された唯一の選択肢、バーチャル乱行パーティとは?(写真)

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE