海外で話題の「ドライブインフェス」って儲かるの? 主催者に直撃

「観客の前で演奏できる機会というのは安堵をもたらす」

トゥペロと1/STはPAと無線伝送を併用してこれまでのコンサートよりも臨場感溢れるサウンドを提供しているし、レンジャーズは観客が車を出ないようにラジオ配信に限定している。また、レンジャーズと1/STは地理上フェンス(地図上でエリアを限定する仮想壁)でラジオ配信範囲を限定することで、駐車場の外からアクセスできないようにしている一方で、トゥペロはこれよりもアクセス可能範囲が広い。さらに、こういう技術が常に完璧とは限らない。1/STが行なったD-Niceのライブの場合、ステージから遠くなればなるほど、PAからのラジオ配信にディレイが生じたと、ヴァーガスが言う。

これがライブ・ミュージック業界の資金難に対する答えになるかは別として、ドライブイン形態は3月以来初めて生でアーティストを観る、生でアーティストが演奏するという感覚をファンとアーティスト両者に与えてくれたのは事実で、ツアーに戻りたいと願うアーティストにとっては歓迎できる方法だ。1970年代にトッド・ラングレンとユートピアで活動していたベーシストのカシム・スルトンは、ニューヨークからニューハンプシャー州デリーまで4時間ドライブしてトゥペロの2度目のドライブイン・コンサートに参加する。

また、スルトンはソーシャル・ディスタンスを保つために、バンドではなくソロで演奏する予定だ。そして、これで大金を稼ぐことも期待していない。会場までの往復の経費が出ればそれでいいと言うのだ。彼にとって今は再びライブを出来ることが最も重要なのである。「音楽業界でプロとして音楽を演奏するようになって今年で44年目だが、今年は3月からずっと自宅にいる。自分が望んでそうしているのではなくて、そうしないといけないからだ。これは自分にとって異様なことで、強制的に自宅にいることに違和感を感じる。だから観客の前で演奏できる機会というのは安堵をもたらすんだ」とスルタンが教えてくれた。

Translated by Miki Nakayama

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