ネガティブな側面も受け容れるべき 過度のポジティブさが孕む危険性とは?

 
そもそもネガティブな感情が生じるということは、人としてごく自然なことです。ネガティブな感情があるからこそ、慎重にものごとを考えることができたり、危険を察知して回避することができたりする面もあり、人が生きていく上でとても必要なものでもあります。そうした感情を否定したり隠蔽したりするということはむしろ不自然なことで、過度のポジティブさを要求したり、自分にそれを科したりすることは、本来の人間らしさ、その人らしさを抑圧することにもつながってしまいます。そのような抑圧はストレスを生じさせ、結果的にメンタルヘルスを害してしまう場合もあります。そして、過度なポジティブさは、ネガティブな感情を抱くことを「恥」と捉えさせてしまい、それが心理的な痛みを生じさせます。その痛みから逃れるために何かに依存したり、問題行動を起こすようになったりしてしまう場合もあります。

また、「ものは考えよう」という類のポジティブさがあります。確かにものごとには複数の見方があり、考え方やものの見方を変えてみることで問題が解決することもあります。カウンセリングにおいてもそのようなやり方をとる場合もあります。しかし、過度にポジティブなものの見方をするとき、本来は社会や環境の問題であるはずなのに、そうした根本的な問題から目を逸らし、「個人の気の持ちよう」と問題を矮小化してしまったり、個人の犠牲による問題解決にすり替えてしまったりする危険もあります。

周囲の人も、例えば「それについては考えないで、ポジティブにいこう!」ではなく「あなたの感じていることを聴かせて」、「心配するなよ、ハッピーに行こう!」ではなく「あなたはストレスを感じているようだけれど、何か助けられることはない?」などのように、きちんとネガティブな感情を認めて、それを受け容れることが大切です。そうした「傾聴」を行うことがカウンセラーの役割でもあります。自分の中のネガティブさにも向かい合い、それを含めて自分である、と認めることが大切で、それが本来の自己肯定感と言えます。また、そうしたネガティブさを含めた自分をそのまま受け容れてくれる人が周囲に一人でもいれば、自然とポジティブに生きていけるようになるものなのです。

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