現代のCBGB? NYの小さなライブハウスが約1300万円の支援金を集める

2014年にSaint Vitusで演奏するアゲインスト・ミー!(Photo by Taylor Hill/Getty Images)

COVID-19はインディペンデントなライブ会場を危機的状況に陥れた。パンデミックによって3月半ばにアメリカ国内の夜の歓楽街が閉鎖されたことに伴い、多くの店舗がGoFundMeなどの寄付サイトで、自宅待機中のスタッフのための緊急救済基金を募った。

ところがニューヨーク・ブルックリンにある音楽ヴェニューSaint Vitusはそれとは違う方法を選択した。4月17日、彼らはキックスターターにページを開設し、このクラウドファンディング・プラットフォームを活用することにしたのである。本来のキックスターターは、スタートアップ・プロジェクトとイニシアチブ(アルバム、スマホのアプリ、ボードゲームなど新アイデア)の実現支援に特化したクラウドファンディングで、困窮するビジネスを助けるものではない。

キックスターターのページ冒頭には「Saint Vitus Stays Home:みんなに愛されるブルックリンのライブ会場でメタルバーのSaint VitusがCOVID-19閉鎖に負けない支援を」というキャンペーン・タイトルが書かれている。寄付者への返礼も5ドル(537円)のチケットと30ドル(3222円)の限定版Tシャツから75ドル(8057円)のサイン入り写真とThursday’s Tucker Ruleの100ドル(1万742円)相当のドラム・レッスンまでさまざまあり、多額の寄付をした人は1年間ライブに無料招待される。このキャンペーンの目標額は1万5000ドル(161万円)だったが、開始後3時間以内で到達してしまった。そしてこのキャンペーン期間が終了する6月6日までに、Saint Vitusは当初の目標金額の10倍に近い12万5000ドル(1342万円)の救済金を集めた。

パンデミックで危機的状況に陥ったアーティスト、コンサート・プロモーター、小規模会場のオーナーが成功する例は非常に稀だ。さらに13%を超える失業率が示す通り、すでに収入が激減した人々から寄付金を募ること自体が非常に難しい状況でもある。しかしSaint Vitusの共同オーナー兼ブッキング担当のデヴィッド・カスティロは、キックスターターでの成功の要因はSaint Vitusのライブハウスとしての知名度に加えて、同クラブならではの商品があることだと結論づける。「CBGBと同じだ。CBGBのTシャツを着ている人がいたら、周囲はその人がパンク好き、ニューウェイヴ好き、ハードコア好きだと推測するだろう」とカスティロ。確かにCBGBのようなに個性が際立つクラブはライブ会場としての価値以上のブランド・イメージを持っている。これをSaint Vitusに当てはめると、同クラブで販売している「Satan is great, whiskey is super」と書かれたTシャツを着ている人を見たら、周囲はこのTシャツを献身的なメタル・ファンの意思表示とみなすわけだ。

【動画】Saint Vitusでライブをするイーグルス・オブ・デス・メタル

Translated by Miki Nakayama

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