ローリングストーン誌が選ぶ「アニメーション映画」ベスト40

16位『リトル・マーメイド』(1989)

荒野をさまよい続けて数10年、ディズニーはデンマークの童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンのおとぎ話『人魚姫』のブロードウェイばりの映像化によってアニメーション新時代へと躍り出た。ディズニーの『リトル・マーメイド』は、人間であることのすばらしさを描いたカラフルなミュージカル・ファンタジー作品である。クオリティの高い制作と完璧な曲づくりという高いハードルを定めたのもまさに同作だ。『リトル・マーメイド』なしに『ライオン・キング』も『アナと雪の女王』も存在しなかった。同作の中でも、アラン・メンケンとハワード・アッシュマンが手がけた「アンダー・ザ・シー」や「パート・オブ・ユア・ワールド」といった楽曲のおかげでディズニーは文化史に永遠に名を刻む存在となった。ST

15位『チキンラン』(2000)

『ウォレスとグルミット』のニック・パーク監督とアードマン・アニメーションズの創業者のひとりであるピーター・ロードは、チーズが大好物の発明家と愛犬の冒険を一時中断し、アードマン・アニメーションズ初の長編アニメーションを制作した。ストップモーション作品『チキンラン』は、養鶏場で命を狙われた抜け目ない雌鳥と彼女たちを救おうとするお調子者の雄鶏(声はメル・ギブソン)のストーリーだ。映画『大脱走』へのオマージュであると同時に資本主義の勝利がもたらした惨状を物語る同作は、無鉄砲なドタバタ喜劇と肝っ玉の座ったヒロイン、さらにはキュートで風変わりなニワトリたちのおかげで何かとセリフを引用したくなる機知に富んだ作品に仕上がっている。AW

14位『蒸気船ウィリー』(1928)

ディズニーのコーポレート・ロゴになる前、当時大人気を博した短編アニメーション作品でいつもトラブルを起こすいたずら小僧といえば、ミッキーマウスだった。そのなかでも、いまでももっとも有名なデビュー作が『蒸気船ウィリー』である。注目するべき点は、ミッキー&ミニーのデビュー作であるのはもとより、同作はウォルト・ディズニーが手がけた映像と音がシンクロした初の作品であることだ。同作が公開されて80年が経ったいまも、大きな河の上でキャラクターたちが繰り広げるどんちゃん騒ぎの効果音と映像が見事にシンクロしているのを観ると、当時のスタジオ・テクニシャンの手腕がいかに優れていたかがわかる。そうした効果音のおかげで、いたずらネズミのドタバタ喜劇のような冒険が際立っている。ミッキーが大企業に取り込まれ、手懐けられる数年前の話だ。NM

13位『となりのトトロ』(1988)

魔法の生き物と超自然現象を強い母性愛と結びつけた宮崎駿の優しさあふれるファンタジー作品『となりのトトロ』。幼い子供から大人までもが楽しめる同作は、多くの人にとってスタジオジブリを代表する作品である。宮崎作品のなかでももっとも人気のキャラクターである森の謎の生物と自然のなかに慰めと喜びを見出す幼い姉妹(母親は病気のため入院中)のストーリーは、感傷的ではないのに静かに胸を打つ。不思議な現象が日常の一部としてすんなり受け入れられた幼少時代の描写は秀逸だ——もちろん、いつでも望めばネコバスが迎えに来てくれるはず。ST

Text: Sam Adams & Charles Bramesco & Tim Grierson & Noel Murray & Jenna Scherer & Scott Tobias & Alissa Wilkinson / Translated by Shoko Natori

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