ローリングストーン誌が選ぶ「アニメーション映画」ベスト40

12位『インサイド・ヘッド』(2015)

『インサイド・ヘッド』は、ハリウッドのどんなブランドよりもピクサーが強いことを証明している。というのも、ディズニー/ピクサーは悲しみの意味をテーマとした映画を作るのに1億7500万ドル(およそ187億円)を注ぎ込んだのだ。同作は、主人公の少女の頭のなかの司令部で暮らすヨロコビ、イカリ、ムカムカ、ビビリ、カナシミという5つの感情たちのストーリーだ。こう説明すると、ホームコメディドラマ『Herman’s Head(原題)』のデジタルアニメーション版のよう聞こえるかもしれない。少女が人生の辛い局面と闘う一方、同作は成長とそれに伴うほろ苦い感情を描き、涙なしには観られない作品へとシフトしていく。

11位『What’s Opera, Doc?(原題)』(1957)

ごく普通の小学生がオペラに熱中することはないだろう。だが、『What’s Opera, Doc?(原題)』の劇中で流れるワーグナーの「ワルキューレの騎行」を聴いているとなんだか楽しくなってくる。嫌いなブロッコリーを無理やり食べさせられているような、文化的に受け付けないものを押し付けられる印象もない。同作では、バッグス・バニーと宿敵エルマー・ファッドが繰り広げるアニメーション史上もっともワイルドな追っかけっことルーニー・テューンズ名物の女装がドイツ・ロマン派歌劇の巨匠の白昼夢を通じて描かれている。ルーニー・テューンズ絶頂期に誕生したいまも人気の多くの作品同様、同作には完璧なオチが待っている。同作を見る限り、ワーグナーはとんだトラブルメーカーだったに違いない! CB

10位『明日の世界』(2015)

17分だけでいいので、時間をください。私たちの未来のクローンが私たちに接触して人類の行く末を語る、という魅惑的でありながらも恐ろしいパラレルワールドを描くのに新進気鋭の短編アニメーション監督のドン・ハーツフェルトが必要としたのは、17分という短い時間だった(人類は進化によって欲望の渇きを癒すことができると思っている人は考え直してほしい)。主人公エミリーの声を担当したのは、ハーツフェルト監督の4歳の姪っ子のウィノナ・メイ。エミリーは200年後の自身のクローンと名乗る女性の意味を理解するには幼すぎる。だが、『明日の世界』は、人生につきもののちょっとした不思議に適応したヒロインの少女と同じくらい美しくも無垢である一方、答えようのない質問を投げかける。同作は宇宙のように広大でありながらも、メイの可愛らしいクスクス笑いが象徴するささやかな喜びに満ちあふれているのだ。TG

9位『ストリート・オブ・クロコダイル』(1986)

いまではほとんどのアニメーションがデジタル化されたが、スティーブンとティモシー・クエイ監督のようなストップモーションの先見者は、いまも手というアナログな方法を使い続けている。ポーランドのシュルレアリスト作家のブルーノ・シュルツとストップモーションの精神を受け継いだヤン・シュヴァンクマイエルからインスピレーションを得た2人は、1986年公開の短編アニメーション作品『ストリート・オブ・クロコダイル』であごのとがったパペットの男(作品を通じて男の体は朽ちていくようだ)とともに踊るネジや血だらけの臓物を詰め込まれた古びた機械を描いた。同作の舞台は、1世紀前あるいは1世紀後の世界だろうか? いずれにしても、決して目覚めることができない鮮明な夢のようなタイムレスな雰囲気が漂っている。SA

Text: Sam Adams & Charles Bramesco & Tim Grierson & Noel Murray & Jenna Scherer & Scott Tobias & Alissa Wilkinson / Translated by Shoko Natori

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