音楽ジャンルと黒人差別、80年にわたる不平等の歴史

人種にかかわらず、どんなジャンルでも働けるようになるべき

今日も、レーベルが使う言葉はさまざまある。しかし「アーバン」はラジオのエアプレイを調査するメディアベースという企業でよく使われるため、多くのラジオ向けプロモーションスタッフは、ラップとR&Bのシングルを推すことに注力する「アーバン」部門を持っている。

他方、コロンビアレコードはラジオに限らない「アーバン」部門を持っていて、インタースコープもそうだし、イベンター大手のライヴ・ネーションも同様。アトランティック・レコードには「ブラック・ミュージック部門長[President of Black Music]」がいる。しかし、それに対応する「ホワイト・ミュージック部門長」はいない。なぜなら、そいつは会社全体を動かすトップのことだからだ。

こうしたさまざまな名付けの慣習はレーベルがどう運営されるかに対した影響を持たない。人種に紐付いた部門名をとりやめた企業であっても、黒人の重役はもっぱら黒人のアーティストと――白人の重役による監督のもとで――仕事をし、白人の重役はそれ以外なんでも担当、という原則に従って組織されたままだ。そして、リパブリックのInstagramへのポストから表現を借りて言えば、こうした「過去のもはや時代遅れの構造」が変わらない限り、「アーバン」という言葉を放棄しても、音楽産業の人種差別的な過去という遺産を乗り越えるには及ばないだろう。

最近起こっている変化は、メジャーレーベルが取り組みたがらなさそうな数多くの制度的な問いを提起している。たとえば、リパブリックと契約する白人のシンガーであるアリアナ・グランデが、次のシングルの制作にあたってラップやR&Bの要素を多く借りようというとき、そうしたジャンルに特化したA&Rと仕事をするのか、それとも白人が大部分を占めるポップス担当スタッフと仕事を続けるのか。マーケティング予算は白人のアクトとこれまで「アーバン」と呼ばれたアクトで平等に割かれるようになるのか。黒人アーティストは白人と同じくらいポップス向けのラジオ局で腕試しできるようになるのか、そうだとして、黒人の広報幹部もポップス向けの局を担当できるようになるのか。そして、黒人のアーティストや幹部は、望むときに、会社の万全のサポートのもと、ヒップホップやR&Bの外でも仕事ができるように果たしてなるのか。

「私たちの肌の色は、私たちの関心、知識、あるいは専門性のあり方を決定づけるものではない」と語るのは、アトラス・ミュージック・パブリッシングのA&R部門長、ラトーヤ・リーだ。「私はカラオケに行ったらキャリー・アンダーウッドを歌うし、パニック!アット・ザ・ディスコも歌う。サックスを演奏して育ち、『ティアドロップス・オン・マイ・ギター』以来のテイラー・スウィフトのファン。人種にかかわらず、どんなジャンルでも働けるようになるべき」

リーが目指すのは、根本から変わった音楽産業だ。それはサニー・ジョー・ホワイトが1982年に「アーバン」という言葉についてたずねられたときにそれとなく示したものと一致している。「酷すぎる」と彼は答えた。「なんであれ、私たちが(ジャンルという)ラベルを使わなければならないということが」

●フロイドさん暴行死、世界各国で連帯する抗議デモ(写真ギャラリー)

Translated by imdkm

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