コロナ感染、65歳以上の高齢者に対する偏見と差別意識

人生の先輩の「声」に耳を傾けるべき

それに加えて、パンデミック収束後にある種の日常生活へ移行することは、高齢者にとって一筋縄ではいかない。イスラエルの共同研究センターとトロント大学の心理学助教授、ボアズ・M・ベン・ダヴィード博士も指摘しているように、企業が雇用活動を再開しても、60~70代はあまり雇用したがらないだろう。言い換えれば、COVID-19収束後もその残像は高齢者について回る。働き口が減り、それによって金銭的な保障も少なくなる。それだけではない。「働かなくてもお金に困らないような人でも、認知力や社会的交流、人生の生きがいといった意味で、やはり仕事は必要なのです」と、ベン・ダヴィード博士はローリングストーン誌に語った。

だがジョップ博士が指摘しているように、パンデミックが老いに対する考え方を前向きな方向へ変える可能性もある。今回のことで、家族やコミュニティ内の高齢者と過ごす機会も増えている。事実、ジョップス博士が行った過去の研究でも、上手に歳を重ねた良き手本が身近にいる場合、自らの老いに対する考え方もポジティブになることが分かっている。

同様に、フィンガーマン博士も大学院生と協力して、高齢者と若年層を結びつけるプロジェクトに取り組んでいる。「ですが、基になっているのは高齢者が困っているという考えではありません」と彼女は言う。「高齢者は知恵と経験が豊富で、会話の糸口を与えてくれるという考えから来ています。もちろん、衰弱した独り暮らしのお年寄りに――助けが必要ならば――手を差し伸べることは重要でしょう。だからこそボランティアがいるわけです。それは重要なことです。ですが別の一面として、絆を生むきっかけになるのではないかと思うのです」

ただ単に誰かとのつながりを求める前に、この年齢層の人々から学ぶべきことはたくさんある。「高齢者はみなそれぞれに苦難と戦い、打ち勝ってきました。高齢者に背を向けるのではなく、正面から向き合って、彼らの打たれ強さ――人生で直面した災いをどうやって乗り越えてきたのかを学ぼうじゃありませんか」と、ベン・ダヴィード博士は言う。「彼らこそ、立ち上がるすべを知っています。彼らを見捨てるのではなく、底力について語る彼らの声に耳を傾けるのです」

Translated by Akiko Kato

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