FISHMANSが挑んだAR拡張現実化ライブ ディープな夜に示した「INVISIBILITY」

今回試みられたAR演出システムは、1番背面にバーチャルセットのレイヤー、真ん中に演者がいるステージの物理的なレイヤー、その手前にもう1レイヤーを重ねることで、より世界観を拡張することが特徴的なもの。カメラマンが近くにいなくても遠隔操作可能な4K60p撮影対応のPTZカメラを使うことで、ネットワーク越しにカメラのズーム、パン、チルなどリアルタイムにレンズデータを取得し、ARレイヤーをカメラが撮影する映像に描画するという画期的な演出方法だ。渋谷のランドマークであるPARCOという現実世界に、バーチャルな空間をインストールしてエンターテイメントの演出に活かすかを研究した結果生み出された、ポストコロナ禍におけるライブのあり方を提示するような挑戦的な取り組みとなった。



茂木欣一(Vo.Dr)、柏原譲(Ba)、HAKASE-SUN(Key)、木暮晋也(Gt)、原田郁子(Vo)、dARTs(Gt)、そしてエンジニアを務めるZAKが円になり、ライブは22時に「チャンス」からスタート。万華鏡のような映像の前でドラムを叩く茂木。映像の中のメンバーたちの頭上にはAR演出システムによって丸い球がフワフワと行き交っている。長い間奏でたっぷりと空間と音の魅力を提示した「チャンス」から、「いなごが飛んでいる」へ。軽快に疾走するこの曲は、「このメンバーで初めてやった」(茂木)というレア選曲。dARTsが強烈なギターソロを披露して、一方のギタリスト木暮が「留守番電話―ー!」と大声でシャウトするとどこからか思わず笑い声が聞こえてきた。デビュー曲「ひこうき」、「なんてったの」と、1stアルバム『Chappie, Don’t Cry』からのリラックスしたナンバーが続く。茂木のメインボーカルに原田のハーモニーが小気味良く重なった「ひこうき」では、画面上に巨大なトマトが赤く光ったり緑色に光ったりしながら浮かんでいた。「なんてったの」の終わりには、円になって演奏しているバンドの真ん中に、ARによる「柱」が浮かび上がった。耳に残る印象的なシンセのフレーズをリフレインする「Just Thing」では、淡々としたリズムでバンドが徐々に熱くなり1つになっていく。続く「頼りない天使」は中央に天使の像が姿を現す中、原田がメインボーカルを取り、感動的な歌唱を聴かせて、前半のハイライトとなった。

「25年振りぐらい、久しぶりにやる曲」との茂木のMCからも歌い出したのは、「MY LIFE」。どこか初々しいような少年のような歌声で、微笑ましさすら感じる、長年のファンにとって最高のプレゼントだった。続いてライブ感満点のアッパーチューン「MELODY」へ。中盤からサビを原田が担当して、茂木がサビメロを追いかける。間奏でスタジオ録音ではギターカッティングで聴かせる箇所をシンセで聴かせて、ステージに合わせたより幻想的なアレンジとなっていた。ピアノのリフにギターがユニゾンしてラストへとバンドが高まって行く流れの高揚感はたまらないものがあった。

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE