FISHMANSが挑んだAR拡張現実化ライブ ディープな夜に示した「INVISIBILITY」

ここで、換気タイムと称してしばし休憩が取られて、ライブは23時から再スタート。ZAKが、「配信なんでローが聴こえないと思います。ヘッドフォンやスピーカーから出して聴いてみてください」と推奨すると、茂木も「そうね。ローを感じてください」とコメントして、原田のボーカルによるバラード「救われる気持ち」でしっとりと後半がスタート。タイのコムローイが多数舞い上がるノスタルジックな演出は、続く木暮のギター1本で茂木が歌った「IN THE FLIGHT」の蛍が飛び交うような光景へと叙情性たっぷりにバトンを渡した。



ライブ後半、「土曜日の夜」で幻想的なムードを創り上げ、バンドは「I DUB FISH」でますますディープなダブで深い夜へと手招きする。HAKASE-SUNのピアニカに合わせて茂木のドラムが縦横無尽に暴れ出す。気が付けば、実際の時刻も23:30をすぎ、予定を遥かに越えてナイトクルージングに誘われる。終盤に差し掛かり、「もう少し初期の曲を」との紹介から「いかれたBaby」が歌われた。儚いメロディを切々と歌い上げる茂木のメインボーカルと、中央まで出てハーモニーをつける原田の歌声。頭上には惑星が太陽を囲んで回っている。続けて繊細なギターの単音フレーズが聴こえてきた。演奏されたのは「ナイトクルージング」だ。茂木と原田の声が重なると、曲の後半、画面の中には次々とAR演出による花火が打ち上げられ、現実世界の夜空を埋め尽くしていった。感動的な光景がバンドを包み込む中、ライブはラストナンバー「夜の想い」でエンディングを迎えた。茂木が「ずっと待ってるぜ」と繰り返し歌い、メンバーがコーラスする。その声が、佐藤伸治へと捧げられたものであることは配信終了後のタイトルに「Dedicate to SHINJI SATO」と加えられていたことからも明らかだった。

茂木がライブ中のMCで、この日のセットリストには「無邪気」というテーマがあったと話していたように、初期から佐藤伸治と創り上げてきたFISHMANSの歴史を順に辿っていくピュアなセットリストが、AR技術を駆使した映像の中でより一層人間味を持って伝わってきた。会場で同じ空間を共有していなくても、音楽で心を1つにする喜びと興奮は感じることができる。そして、そこに姿はなくとも、音楽を通していつでも誰かの存在を感じることができる。FISHMANSのライブが拡張現実と融合し、配信ライブという枠を超越した、感動を与えてくれた素晴らしいライブだった。



<ライブ情報>

FISHMANS
SUPER DOMMUNE tuned by au5G AR LIVE「INVISIBILITY」

開催日:2020年6月14日(日)

=セットリスト=
1. チャンス
2. いなごが飛んでいる
3. ひこうき
4. なんてったの
5. Thank You
6. Just Thing
7. 頼りない天使
8. MY LIFE
9. MELODY
10. 救われる気持ち
11.IN THE FLIGHT
12. FUTURE
13. 忘れちゃうひととき
14. 土曜日の夜
15. I DUB FISH
16. いかれた Baby
17. ナイトクルージング
18. 夜の想い

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