氷室京介とRCサクセション、キングオブロックのライブ盤を振り返る

スローバラード / RCサクセション

想いのこもった演奏。万感の想いを注ぎ込んだ歌というのはこういう曲を言うんでしょうね。RCサクセションで「スローバラード」。2005年に発売になったアルバム『RHAPSODY NAKED』からお聴きいただいております。このスローバラードはオリジナルが1976年の3枚目のアルバム、さっきちょっとお話した『シングルマン』の中に入っていました。この「スローバラード」の前に演奏されたのが、「ステップ!」という「スローバラード」の後に出たシングルなんですけど、1980年のアルバム『RHAPSODY』には、「スローバラード」も「ステップ!」も入っていなかったんですよ。これも当時アルバムを聴いた時にあれ? と思った理由ではあったんですね。2005年に出た『RHAPSODY NAKED』にはライナー・ノーツが付いておりまして、オフィスオーガスタの今の会長・顧問である森川欣信さんがライナーを書いているんです。『RHAPSODY』のディレクターが森川さんだったんですね。彼はどん底のRCサクセションを見ている。1970年くらいからずっと見ていて、RCサクセション公認の追っかけの業界の人だった。そしてKitty Musicに入って『RHAPSODY』のディレクターをやった。当時は、RCサクセションは髪の毛を立てたロックバンドとして新しいところに行くんだという気概があったわけで、ライブをレコーディングするんだけども、最高の音を世の中に届けたい、新曲を中心にしたい、演奏のミストーンも録り直したりした。RCの最高の音を聴かせたかったからそうしたんだ、と彼は書いているんです。でも、RCの久保講堂の本当の生のライブの音があるんだっていうことが彼はずっと気になっていた。ビートルズの『レット・イット・ビー』のネイキッドが出た時に、これをやればあの久保講堂がもう一度、ちゃんとしたライブ盤として、あの空気、熱気、演奏が届けられるんじゃないかということで、『RHAPSODY NAKED』を作ったという風に書いていたんですね。これが本当に説得力がある。ライナー・ノーツというよりも、当事者が自分の想い、自分の中のRCサクセションのあのライブっていうのをきっちり総括している。そういう素晴らしいライナー・ノーツです。それが全ての答えだったわけですけども。これから戦うんだという、10年間不遇を囲ってたRCサクセションの全ての想い、ファイティングスピリットというんでしょうか。それが全部篭っているアルバムなんですね。次の曲も新曲として演奏されていました。

雨あがりの夜空に / RC サクセション

RCサクセションの「雨あがりの夜空に」。この時は新曲でありました。1980年4月5日、久保講堂のライブを収めた『RHAPSODY NAKED』からお聴きいただきました。オリジナルは1980年6月、2005年に『RHAPSODY NAKED』が出ました。本当にライブ盤らしいですね。久保講堂ってとっても小さいんですよ。観客はわずか1000人でした。まさか40年後にこんな風に語られるライブになるとは、当時客席にいて夢にも思わなかったわけで。でも1980年のこのライブの後に出た『RHAPSODY』を聴いた時にあった、うーん……という感じをこのアルバムは全て消してくれました。本当によく出してくれました。このライブがあって3ヶ月後、1980年7月5日にRCサクセションが初めて日比谷野外音楽堂に出るわけですが、それを観に行ったのが氷室京介さんでありました。

Rolling Stone Japan 編集部

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