リベラルな名門校が性的暴行の温床に 教師と生徒の距離が近すぎると批判

古いものは少なくとも40年前までさかのぼる

今回、イザベルが新た起こした訴訟によると、キャトリン・ガベル校で彼女が受けた仕打ちは、学校側が隠ぺいしてきた組織的暴行の一つにすぎないという。キャトリン・ガベル校は、オレゴン州でも常に上位に挙がる名門校で、卒業生にはオスカー受賞監督、外交官、ITスタートアップ企業のCEOなどが名を連ねる。おそらくもっとも重要なのは、キャトリン・ガベル校がリベラルな教育で知られていることだろう。実践的な学習経験を育み、生徒と教師の距離が近いことを売りにしている。

こうした校風が生徒と教師の間に不適切な関係を生む土壌となり、ハフのような加害者が誰にも気づかれずコミュニティ内に入り込むのを許してしまった、とイザベルの弁護士ピーター・ジャンシ氏は言う。「頻繁に子どもたちに現地体験をさせたり、学校施設内のホームに住まわせたりするなど、特別な教育体験を謳う学校があります。そうした体験は学校の敷地外や、通常の授業時間以外で行われます」と同氏。「信頼できる大人から性的暴行を受けるのを防ぐには、そうした環境は非常に危険であることは周知の事実です」

この数年でキャトリン・ガベル校の教職員は、十数件もの児童性的暴行絡みの訴訟で訴えられている。古いものは少なくとも40年前までさかのぼり、ごく最近では2014年のものもある。Facebookに性的不適切行為が投稿されたのを受け、学校側は内部調査を実施。2019年冬に調査結果を公表した。調査報告によると、この学校は過去40年間で少なくとも21人の性犯罪者を雇っていたとみられる。そのうち7人は実名が公表されているが、運営職員は警察に報告しなかった。この騒動は地元メディアでは大きく取り沙汰されたが、全国メディアではほとんど話題にならなかった。

性的暴行の疑いがもたれているうちの1人、元6年生の担任だったリチャードソン・シューメイカーは、23人の生徒から不適切な接触および痴漢行為で非難されていたことが内部調査で判明した。他の教師に報告した生徒もいたが、シューメイカーはその後も勤務し続けた。2000年、過去の性的暴行容疑(キャトリン校の学生とは無関係)でシューメイカーが保安官事務所から捜査を受けていることを学校側が知り、ようやくシューメイカーは2001年に退職した(内部調査報告によると、事件が時効を過ぎていたため、保安官事務所は調査を「終了したようだ」。シューメイカーは2018年に他界した)。

内部調査の結果が公表されて以来、16人の元生徒が、在学中に教職員から性的暴行を受けたとして学校側を訴えている。

この騒動で、固い絆で結ばれていた卒業生コミュニティは混乱に陥った。元生徒や在校生、その親の多くは、暴行容疑の惨状を認めようとしない、とジャンシ氏は言う。「皆さんこうおっしゃいます。あそこはいい学校だ、何人か良くない人物がいるとしても、問題を起こした人間はもういなくなったじゃないか、と」と同氏。「児童に性的不適切行為を働いた可能性のある人間が21人……少なくとも40年にもわたってですよ。これは組織ぐるみの問題といってもおかしくありません」

Translated by Akiko Kato

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