フェアユース解禁は次世代の評論の新たな指標となるか

黒澤明の解説動画が海外で生まれる皮肉
フェアユースの封印の影響とは?

フェアユースは音楽だけに限らない。たとえば、Every Frame Paintingという、映画解説系YouTuberの動画に黒澤明を題材にとったものがある。代表作の映像をほぼ使用し、副音声として解説をオーバーダブする構成。例えば「雨」をキーワードに、贅沢にも巨匠の映像を縦横無尽にモンタージュするなど、大変見ごたえがある内容となっている。

・Akira Kurosawa - Composing Movement



この動画は現在、再生数も550万回を超えとなっている。古典の批評で500万回の再生回数というのは破格だ。加えて3300件以上のコメントが熱い議論を繰り広げている。批評がこの規模の反響を呼ぶことが現代、他の媒体であるだろうか。大衆による芸術への議論の中心はひょっとすると今はYouTubeに存在するかもしれない。あくまでひょっとするとだが……。

しかし、フェアユースが認められないというハンデの結果、日本が誇る“クロサワ“のこういった動画が海外で生まれたのは、何とも皮肉な話である。

分析美学者ノエル・キャロルは、芸術批評の本質は「価値づけ」であるとしている。フェアユースを用いた批評コンテンツの不在は、日本人がアートの「価値づけ」に関する重要な機会を逸しているのかもしれない。「価値づけ」をせず、ぼんやりとした集団意識の下に、なんとなく優れていると思う作品を人々が選択し続けたら、シーンもぼんやりとしたものに、なってしまうのではないだろうか。フェアユースの封印は、巡り巡って国産アートの発展を鈍らせる要因になるかもしれない。

みのミュージック
https://twitter.com/lucaspoulshock
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Edited by Aiko Iijima



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