新型コロナ、重傷者の治療薬として話題の「デキサメタゾン」とは?

結局のところ、デキサメタゾンは奇跡の薬なのか?

手短に言えば、デキサメタゾンは私たちが思い描くような奇跡の薬ではない。本誌がインタビューした医療専門家は、これらがまだ予備的な研究結果にすぎず、パンデミック治療としてのデキサメタゾン活用方法を知るには、さらなる情報が必要であると各々が強調した。「可能性があるのはエキサイティングです。少なくとも、いま手に入る情報に関して言うなら。でも、気をつけなければいけないのはたしかです」とハンラハン准教授は言う。ハンラハン准教授は、昨今発表されている新型コロナウイルス関連の研究のほとんどが査読というプロセスをまだ踏んでいないと指摘した。決定的な論文がひとたび発表されれば、研究にまつわるこれまでの報道が覆される可能性もあるのだ。

今後の臨床試験によって「リカバリー・トライアル」と同じ結果が得られるとしても、デキサメタゾンは一握りのコロナ患者——要は入院患者——にしか有効ではないという点も忘れてはいけない。パウエル教授は、デキサメタゾンにはまだわかっていない重要な点がいくつかあると言う。何らかの効果を見せたほかの治療薬((レムデシビルや回復期患者からの血清療法など)と比べてどうなのか、どのような患者の小集団に対して有効なのか、ステロイド治療による合併症を最小限に抑えられるのはどれか、といった質問の答えはまだ見つかっていない。

新型コロナウイルス同様、多くのことがいまだ謎に包まれている。そのため、科学者が可能な限り最良と言える治療薬を特定するには、まだまだ時間と研究が必要となるだろう。「私たちが見てきたほかのウイルス性肺炎と肺障害と比較すると、新型コロナウイルスは少し違っています」とデラ・クルーズ教授は言う。「今回の新型コロナウイルスは、いわゆるウイルス性肺炎とは違うように思えます。でも、そこに答えが隠れているのかもしれません。でも、いまは包括的な研究結果が出て、ほかの研究者も同じ結果を得られるまで待たなければいけません」。

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Translated by Shoko Natori

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