SKY-HIライブレポ「原点から見た夢の現在地、前例のない未来へ」

SKY-HIのバックグランドが何なのかを改めて示したステージ

一呼吸置きステージへ舞い戻ると、「Doppelgänger」に繋がれる。“確かなこと一つあるとしたら まだ変わらず俺は俺のままだ”と高らかに宣言し、過去へ敬意を払いすべてのヘイトを蹴散らしていくターンに突入。「Persona」では“髪を染めても変わりゃしねえ”とリリックを変え、初心に戻り金髪に染めてきた自身をフックにした。言葉の矢が襲撃する「何様」、自身を奮い立たせる「As A Sugar」とここまでの道のりを語るようなナンバーが続く。「フリージア」に入ると、映像はモノクロに一転。黒い世界のなかでSKY-HIの姿は浮かび上がり、暗い時代に刺す一筋の光のように映る。「見せつけてやるよ」と不敵な笑みを浮かべると、画面はパァッと色づいた。「Name Tag」で鋭いリリックと眼光をリスナーに向け、「Walking Water」では立ち上がる様を描いて見せる。「“水の上を歩くように簡単さ”、だから8年経って戻ってこれたんだぜ?」と、その表情は物語っていた。

間髪明けずに繋がれたのは、国交を物語に例えて歌った「Story Of “J”」だ。歌が入る前には「What’s happen, J?」と投げかけ、いろいろな困難が一気に押し寄せてきた日本に対して「それでいいのか?」と問いかける。続く「F-3」により、思考は世界へ。この2曲を続けることで、日本や世界の現状に対して楽曲を通して疑問を投げかけた。締めの「Young Gifted And Yellow」では、「ECDのロンリーガール」をマッシュアップ。渋谷やレジェンドプレイヤーに思いを馳せると共に黒人差別にも切りこみ、「今が考えるときなんだ」と音楽で伝えきった。



しかし、その場で考える暇を与えるほど、生易しくないのがSKY-HI。休む間もなくビートは繋がれ、ゲストステージへなだれこんだ。「俺たちが、どこから来たか教えよう」という言葉によりKEN THE 390が現れると、「What‘s Generation」が誘われた。ふたりが手掛けた曲は数多くあるにも関わらず、SKY-HIが初めてキチンとした音源に収録されたこの曲を、客演の頭に持ってくるのはなんとも粋な演出だ。勢いとどまることなく「PONR」に引き継がれ、TARO SOULが安心感あるフロウをかます。『FLOATIN’ LAB』収録曲である「Critical Point」でホンキの遊びを魅せつけると、MCを挟み「Lego!!」へ。曲が始まるかと思われたが、ビートが途切れKEN THE 390の誕生日祝いに転じた。8年前と同じ展開に、思わずKENは膝から崩れ落ち、和やかな空気が流れる。それぞれが進み続けていても、関係が変わることはないのだと、息のあったステージで証明してみせた。

ここから一気に、終幕へ向けて加速していく。「死んじゃった友達の歌を歌います」と告げ「Luce」が導かれると、場内はしっとりした雰囲気へ。身近な人がいつ亡くなってもおかしくない今だからこそ、より一層染みるナンバーは季節違いの雪のように心にしんしんと降り積もる。祈りをこめるように「そこにいた」を歌い上げると、ベストに収録される「アイリスライト2020」が奏でられた。以前の「アイリスライト」は「“生きる意味”であれたらいいな」という望みが強く滲んでいるように感じたが、いま歌われる「アイリスライト」は一味違う。「“生きる意味”でいるよ」という、ぶれることのない意志がSKY-HIの表現に存在しているのだ。宣誓のように言葉を届けると、ハッピーチューンの「Don’t Worry Baby Be Happy」でガラッと空気を変え、自粛期間中に生まれた「#Homesession」をロングバージョンで歌いきる。いま隣にいる人を愛そう、楽しむことは罪じゃないと伝えきり、本編をやりきったのだ。

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