MELRAWこと安藤康平が語る生音の魅力、WONKやKing Gnuら同世代との出会い

セッションで輪を広げていった
同世代との出会い、共有する感覚

ー帰国後はコンテストへの出場などを経て、上京されたそうですね。

MELRAW:東京に行くことにしたのは、それこそDIMENSIONの勝田(一樹)さんにちょっとだけ習っていたことがあって、「アメリカで俳優になりたかったらハリウッドに行くでしょ? 日本で音楽やりたいなら東京来いよ」って言われたことがきっかけです。上京して初めて行ったセッションが、今もお世話になってる後藤克臣さんというベーシストが当時渋谷でやってたセッションで。彼は、「情熱大陸」のKing Gnuの回でも(勢喜)遊が行っていた、六本木のエレクトリック神社のバンドも仕切ってます。その日NYヤンキースの帽子を被って行ったら、「お前、ニューヨーク行ったことねえのに被ってんだろ?」って言われて、「いや、ハーレムで買いました」って言ったら、「じゃあ、吹いてみろよ」ってなって。それでセッションに参加したらえらく気に入られて、「今から○○(日本の某有名ソウルシンガー)のバンドとみんなで遊ぶから、お前も来いよ」って言われて、その日からもう「東京すごい!」って思いました(笑)。だから最初は日野“JINO”賢二さん、TOKUさん、FUYUさんとか、「アメリカ帰りのゴリゴリの先輩」みたいな人たちとばっかり演奏していて、そこで相当しごかれたんです。

ー近年活動をともにしている同世代との出会いは、どういうきっかけだったんですか?

MELRAW:King Gnuの(新井)和輝は東京に出てきて初めてできた友達で、そのきっかけもセッションですね。ハブみたいになってた洗足音大の子がいて、その子を通じてものんくるの(吉田)沙良ちゃんと和輝と一緒に洗足の学祭に出て、そこにSuchmosの隼太(HSU)もいたり。(石若)駿ともエレクトリック神社で出会って、(常田)大希は「藝大のチェロ科なんだけど、ロン毛で髭の面白いやつがいる」みたいに紹介されました。King Gnuをスタートするとき、当時の僕らはブラックミュージック寄りにいたから、「ロックバンドやるんだ?」みたいな感じだったけど……こんなことになっちゃって(笑)。

●石若駿が語るドラム哲学、音と人間のハーモニー、常田大希らと過ごした学生時代


石若駿も参加した、MELRAWのセッション映像。六本木・エレクトリック神社で収録。

ーWONKはどうですか?

MELRAW:WONKはヘッドハンティングみたいな感じです。荒田(洸)ともエレクトリック神社ですでに会っていて、(江﨑)文武が当時駿とかとやってた「JAZZ SUMMIT TOKYO」に出演したのをきっかけに、レコーディングに誘ってもらいました。ものんくるは、大人数でやってた頃のライブにえらく感動して、普通にファンとしてライブに行ってたら、「サポートして」「ギターも弾けるなら弾いて」って言われて。時系列はちょっとわからないですけど、同時多発的にいろんなことが起きてましたね。

●WONKの江﨑文武が語る、常田大希や石若駿ら同世代と共有してきた美意識

ーMELRAWに関しても、周りにいた人たちと一緒に作品を作っているわけですが、職人的にプレイヤーの道を進むのではなく、自らのアーティスト活動をしようと思ったのは、何かきっかけがあったんですか?

MELRAW:「アーティスト/プレイヤー」みたいなことはあんまり意識してなかったです。勝田さんもDIMENSIONでは前にいるけど、TUBEのサポートをしたりもしているじゃないですか。だから、もともと「やれることは何でもやろう」みたいな感じ。ただ、僕のイメージって、プロフェッショナルツアーミュージシャン業界からすると、「安藤くんはアーティスト」みたいに見られがちで、あんまり誘われないんです。「安藤くんは一人でやっていくのが好きなんでしょ?」みたいな。やっぱり、これだけ人が多いと勝手にカテゴライズされるんですよね。ジャンルにしても、「安藤くんはジャズだよね」みたいな。


2020年4月に発表した最新シングル「OBSCURE」

ーでも、もしかしたら上の世代とかはそういう括りがあったのかもしれないけど、今の同世代に関しては、「ジャズ」を軸にはしつつも、もっとジャンルレスだし、カテゴライズからは解き放たれてるのかなって。

MELRAW:そうですね。ジャンルの話とかはしなくなりました。MELRAWという名義を作って一番自分が楽になれたのって、自分のことを「~スト」みたいに考えなくてよくなったことで。「サックス奏者・安藤康平」とか「ギタリスト・安藤康平」だと、「こうしなきゃ」ってなっちゃうけど、「MELRAW」が屋号みたいなもので、「MELRAWだったら何でもいい」みたいになれたのは、すげえ気楽でいいなって。

ー「マルチ・インストゥルメンタリスト」と呼ばれることに関してはいかがですか?

MELRAW:実は僕、自分一人で全部やるのはあんまり好きじゃないんです。ジェイコブ・コリアーとかって、音楽性はすごいし、曲も好きだけど、「一人でやる意味ある?」って思っちゃうんですよね。僕の場合、楽器は全部ツールという感じです。「サックスはシャーペン、ギターは三色ボールペン、鍵盤はマーカー」って感じで、筆箱の中に全部入ってて、ノートをきれいに色分けして音楽を作る、みたいな気持ち。でもやっぱりロック出身なので、最終的にはみんなでバーン!ってやるのが好きなんですよね(笑)。

Edited by Yukako Yajima

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