キング・クリムゾン「21世紀のスキッツォイド・マン」当事者たちが明かす50年目の真実

ピート・シンフィールドの悪夢的な言葉

完成した楽曲は、精緻で疑似交響曲的な構造を持ち、いかにこのバンドがロックの音楽的なスコープを拡大しつつもその核となるインパクトを保ちうるかを示すものだった。

「キング・クリムゾンの音楽はほとんど例外なく、よりヨーロッパ的な構造に基礎をおいていた」とグレッグ・レイクは答えている。ローリングストーン誌のアンディ・グリーンによる2013年のインタビューで、バンドの1969年の作曲プロセスを語った際のことだ。「基礎的なブルースリフを使った音楽ではなかった。まったく異なる和声的な構成要素を持ち、異なる構造を持っていて、つまりヴァース、コーラス、ヴァース、ヴァース、コーラス、ヴァース、ヴァース、コーラス……というものではなかった」

「他にあのバンドについて面白いことといえば、もっとオーケストラ的だったということだ」と彼は付け加える。「ムーディ・ブルースみたいな、穏やかで優しく交響曲的な感じではなかった。強烈だった。『21世紀のスキッツォイド・マン』みたいな曲は文字通り人びとを脅かしたものだ」

もし音楽だけではそうした効果を持っていなかったとしても、ピート・シンフィールドの悪夢的な言葉が要点を明確にした。

バンドの作詞家であり、渋々ローディを務めていたシンフィールドは、初期の地下室でのライティングセッションの常連だった。「2、3ほどいい曲があった」と彼は思い起こす。「バンドはなにかヘヴィなものを探していた。そんなわけで、[「スキッツォイド・マン」の最初のリフを歌う]これはまさに私たちが探し求めていたものだった」


ピート・シンフィールドとロバート・フリップ(Photo by Michael Ochs Archives/Getty Images)

同じ頃、彼はジャイルズ・ジャイルズ・アンド・フリップとして知られたこのグループへ、生まれつつあったサウンドにぴったりの名前をつけた。

「凄く尊大な感じが欲しかった。それが『王(キング)』を名前に入れたかった理由だ。君主の尊大さ。……バンド自体が尊大だったものだから」とシンフィールドは説明する。「演奏される音楽はとても多様でクレヴァーなものだったから、私はその尊大さが既に名前の中に待ち構えていてほしいと思った」そして、「クリムゾンというのは」と彼は語る。「もしたくさんの炎や暴力的な光景、そして奇妙で暴力的な怪物を描こうと思ったら、この色を使うしかないだろう、という色だ」

「暴力的な光景」は、制作中のこの曲にとって不可欠なものだった。シンフィールドは――彼は自らの母親について「バイセクシュアルのコミュニスト」と説明したことがあるが、彼女ははやくから彼をアクティビズムに触れさせていた――新聞やテレビで絶えず流れ続けるヴェトナム戦争のイメージを目にしたことを覚えている。そのなかには、「カンボジアの上空を飛ぶ爆撃機が棒状の爆弾をいくつも貧しい農民たちに投下する画像や、あの火事から逃げて道を走る小さな女の子の写真もあった」

彼は簡潔だがばらばらな歌詞一式を徐々に書き始めた。言葉を効果的にリスナーの真正面に突きつけることで、こうした残虐行為を糾弾する歌詞だ。「もし映画だったら、それは連続する数フレームに過ぎないだろう」彼は「スキッツォイド・マン」に書き留めた言葉についてこう語る。「この歌詞には、人びとを震え上がらせ、動揺させ、恐れさせ、ドアから逃げ出させてほしかった――あるいは、私は、人びとにこの歌詞を自らの生活のなかにある他の暴力と結びつけてほしかった」

Translated by imdkm

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