ハイムが語る、野心的なアルバムと確固たる自信「最高のロックを作るのは女性」

アルバムが放つ「自信」の裏側

ハイム姉妹にとって、新しいアルバムのレコーディングは、自分たちにとっての回復のプロセスだった。『サムシング・トゥ・テル・ユー』のための大々的なツアーを終えると、感情的な下り坂がバンドをひどく打ちのめした。「リーニング・オン・ユー」やアルバムの冒頭を飾る「ロサンゼルス」といった新曲のなかには、自分たちの職業に対する物悲しさや感傷がある。小学校時代から一緒に休むことなく演奏してきたファミリー・バンドにとっては未知の領域に感じられるものだ。

「レコーディングをしたその日にどんな気分であっても、お互いにつらくあたることは本当にしなかった」とアラナは振り返る。「意識の流れで書くのをたくさんやった。『ただ座って、聴いて、とにかくいま脳内で考えていることを全部書く』のを。聖域は一切なし」



アルバムのより明るい場面は、「ザ・ステップス」や「ドント・ワナ」といったロックなシングルのように熱烈なまでに希望に満ちカタルシス的なものから、静かで安らかなものまで幅広い。ダニエルが説明するような、「アナザー・トライ」に出てくる自家用車に頼りっぱなしのロサンゼルス人にとっては身近な光景は後者だ。いわく、「後ろの帽子は色あせてしまって/迷彩柄のTシャツが座席に挟まっている」(「私たちみんなにとって、車は財布に似てると思う」とエスティは語る。「いつだってどっちにもしょうもないものが入ってる」)なにより、このアルバムは自信を放っている――これまでも、未だ男性優位のロックの世界を進む、全員女性からなるマルチインストゥルメンタリストのバンドとして、ハイムは自信を欠いたことがないが。しかし『WIMPIII』が示しているのは、この10年をかけて自分たちのサウンドと参照点を確立しきった後でさえなお、ハイムは厭わずアーティスティックな翼を広げて進み続け、自分たちの正しさを証明しようとしているということだ。

「私たちが最初のレコードを出した時、私は21とか22だった。それがいまは28歳」アラナは語る。「成長して歳をとるほどに、もっと自信がついていく。このバンドを最初に始めたときと比べたら、私は完璧に違う人になったみたいに感じるし、このレコードはそれを正しく反映していると思う」

【ライヴ写真】ハイムが3月に行ったデリツアー公演(15点)




ハイム
『ウーマン・イン・ミュージック パートⅢ』
国内盤CD 2020年7月1日発売
全16曲収録、歌詞対訳、解説付
2,500円(税抜)
試聴:購入:https://umj.lnk.to/HAIM_3rdAlbum

Translated by imdkm

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