頭脳警察、無観客配信ライブで見せた「ロックという終わらない青春」

印象的なベース・ラインから始まる「ソンムの原に」は、18歳の時にPANTAが書いた曲。昨年公開された映画『1917』を観て、俺はこの戦いを歌にしたことがある、と思い出したそうだ。第一次世界大戦の激戦地を題材にした曲で、デビュー前からPANTAの眼差しが世界や歴史に大きく向けれられていたことがわかる。そして、「雨ざらしの文明」「絶景かな」とLa.mamaでライブ・レコーディングした新曲を続けて演奏。「絶景かな」はドキュメンタリー映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』の主題歌で、アレンジはおおくぼが担当。サビに向かって力強く盛り上り、サビで「絶景かな」とPANTAが見得を切る。コロナ禍のなかで、頭脳警察が未来に向けた荒ぶるメッセージが胸に刺さった。


Photo by 菊池茂夫

ライブ本編はここで終了なのだが、PANTAいわく観客の「心の拍手」に応えてアンコールを披露する。「戦士のバラード」では、澤がPANTAの横にやってきて並んでプレイ。曲には雄大な広がりと開放感がある曲で、メンバーも清々しい表情で演奏している。そこから、ストレートなロックンロールが全開する「コミック雑誌なんていらない」へ。まだ、こんなエネルギーが残っていたのかと驚かされるほどハイテンションな演奏で、TOSHIのパーカッションが疾走する。このヌケのいいパーカッションの響きは、ライブで聴くとひと味もふた味も違う。メンバーが順番にソロをとっていく王道の演出も含めて、ロック・バンドの楽しさを凝縮したような演奏だ。そして、ラストナンバーは「アウトロ」。ライブのエピローグ的な穏やかな曲で、「いつだって恋と革命」「いつだって誇りと情熱」というフレーズが、ロックという終わらない青春を象徴しているようにも思えた。

拍手も歓声もないなかでのライブは、いつもと勝手が違っていただろう。配信ライブのことをPANTAが冗談まじりに「背信(配信)行為」と言っていたことを宮田がMCで明らかにしていたが、ライブ開始前に「無観客ライブなのでお静かに」と言い渡されて、演奏に痺れながらも、拍手をしたり歓声をあげられないのは背信行為めいていて苦しかった。重量感も躍動感もあり、観る者の感情を引き出さずにはいられない演奏を、息を殺して目撃していたことはこれからも忘れられないだろう。ロック・バンドの演奏をナマで観ることができたのは久しぶりだったが、ライブの楽しみとは、凄みとはどういうものなのかを、頭脳警察はたっぷりと味あわせてくれた。

【ライブ写真】「頭脳警察50 未来への鼓動」(全22点)


Photo by シギー吉田



「頭脳警察50 未来への鼓動」セットリスト

1.赤軍兵士の詩
2.R★E★D
3.乱破者
4.ふざけるんじゃねえよ
5.飛翔
6.さようなら世界夫人よ
7.紫のプリズムにのって
8.ソンムの原
9.雨ざらしの文明
10.絶景かな

●アンコール
11.戦士のバラード
12.コミック雑誌なんかいらない
13.アウトロ

※2020年7月12日までアーカイブ配信中
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zk/頭脳警察50 未来への鼓動
7月18日(土)より新宿K’s cinemaにて公開
©2020 ZK PROJECT
http://www.dogsugar.co.jp/zk.html

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