アジア首位テンセントが唯一出資できない大手音楽会社ソニー、その戦略とは?

英ラジオ局キャピタルFMがO2アリーナで開催するジングル・ベル・ボールの初日にパフォーマンスを披露するソニーミュージックの所属アーティスト、ハリー・スタイルズ。(Photo by Isabel Infantes/PA Images/Getty Images)

アリババを抜き時価総額アジア首位となったテンセント(騰訊)が世界中から注目される中、日本を代表するソニーは、人気ゲーム『フォートナイト』の運営元である米エピックゲームズへの出資を発表した。テンセントが大手レコード会社への出資を進める中、どれだけの大金を積もうとも、ソニーは音楽事業を売却するつもりはなさそうだ。

まったくテンセント(騰訊)は、なんて頭がいいんだ。テンセントがどれだけ賢いかを知るには、まず次のことについて考えてほしい。7月9日、エンターテイメントおよびエレクトロニクス大手のソニーは、人気ゲーム『フォートナイト』の運営元である米エピックゲームズに2億5000万ドル(約268億円)の出資をすると発表した。エピックゲームズが先日叩き出した企業価値は、なんと170億ドル(約1.8兆円)だ。要するに、ソニーはエピックの約1.5%の株式を所有することになる。

しかし8年前の2012年の夏、ソニーのライバルである中国のテンセントは、すでにエピックの株を買い上げるのにかなりの金額を投じていた(約340億円)。これは『フォートナイト』の正式ローンチの5年前だ。この取引により、テンセントはエピックの株式の40%を所有することになった。これは、2020年の取引によってソニーが手に入れた約27倍である。

・【コラム】「フォートナイト」とエピック・ゲームズから音楽業界が学ぶべきこと

7月9日のソニーとの取引を事実と認めたエピックのティム・スウィーニーCEOは、エンターテイメント会社——とくにソニーの音楽会社(ソニーミュージックやソニーATVミュージックパブリッシングなど)——との相互接続性がますます高まる今後の状況に言及した。「ソニーとエピックは、クリエイティビティとテクノロジーの交差点でビジネスを築いた企業です」とスウィーニーCEOは述べた。「そして我々は、ゲーム、映画、音楽の収束につながる、リアルタイムな3Dソーシャル体験に関するビジョンを共有しています」。スウィーニーCEOの発言は、全音楽業界から注目された。というのも、2700万人以上のゲームファンが参加したトラヴィス・スコットの歴史的な『フォートナイト』でのバーチャル・コンサートがまだ人々の記憶に残っていたからだ。

だがソニーとエピックの結合は、音楽業界の分岐点となり得る、ここ数週にわたってソニーから発表された2大ニュースのひとつに過ぎない。偶然かどうかはさておき、もうひとつはお察しのとおり、テンセントに関するものである。

Translated by Shoko Natori

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