星野源、ソロデビュー10周年記念配信ライブで見せた表現の核心と「感謝」

星野源(Photo by 西槇太一)

 

配信ライブが日常になりつつある今、当然ではあるがそれ自体の新鮮味は薄れていく。だからこそ、さまざまなアーティストがアイデアをひねり出して独自のやり方を模索している段階にある。星野が出した答えは、その場にいるオーディエンスの体温や生の歓声が交わる臨場感と引き換えに、ドーム公演をフルハウスにする集客力を持つ今、配信だからこそ画面の向こう側にいる国内外のオーディエンスに等しく提供できる、音楽そのものの息遣いをまざまざと感じ取れるような至近距離のライブだった。そのあり方は、一つの社会現象にさえなった「うちで踊ろう」の共有のされ方に近いと言えるかもしれない。

たとえば「湯気」における“だるまさんころんだ”状態で細かいブレイクを挟みながら戯れる場面にしてもそうだが、演奏やMCのそこかしこに世代を飛び越え音で交歓する星野とバンドメンバーたちとのファミリー感に富んだ関係性や、リハーサルスタジオのムードを想像できるような楽しさがあった。だからといって、もちろんアンサンブルが弛緩しているなどということはまったくなく、メロディアスな楽曲も、ダイナミックな楽曲も前述したようにタイトで自由なフィーリングに満ちた音と音の会話でこちらの耳を悦ばせてくれる。

多幸感が咲き誇るような黒いグルーヴに思わず身体が揺れる「桜の森」、メロウかつディープな流れの中でハーモニーの妙趣を存分に味わえた「肌」、「Ain’t Nobody Know」、「折り合い」。星野がこの10年間に思いを馳せながら弾語りで爪弾いた「老夫婦」。優しさと力強さが溶け合ったようなサウンドの中で、ミクロに目を凝らすことでマクロと対峙する星野のソングライターとしての優れた筆致をつぶさになぞることができた「未来」や「うちでおどろう」。プリンスへのリスペクトを軽妙洒脱に昇華した「プリン」。そして、星野源を今の立ち位置まで引き上げた契機となった「SUN」や「恋」。洋邦や時代性のボーダーを超越し、濃厚に自分の琴線に触れた音楽たちへの敬愛や憧憬を、絶対的な信頼を置くミュージシャン仲間とともに自分にしか形象化できないポップミュージックに錬金してきた星野の道のりをあらためてじっくり確認できるライブでもあった。




Photo by 西槇太一


「いろいろ世の中は毎日変わっていって、ずっと同じ考えでいるのは難しいと思う。でも、自分の中の大事な部分は変えず、それでも自分は違ったな、こっちのほうがいいなと思ったことはどんどん変えていくほうが楽しいんじゃないかと思ってます。最初は中学生のときに人間関係があまり上手くいかなくて、それを吐き出すような歌を書いていて。自分はいろんな音楽を聴くのが好きで、楽しい音楽も切ない音楽も日々ガソリンのように自分のエネルギーとして摂取してきました。(そうしてできた曲を)いつの間にか人に聴かせて喜んでもらえたことがきっかけで、こういう仕事ができるようになりました。大事な部分を人に見せるのが怖くて表に出せなかった自分の歌を10年前の今日に表に出してから、この10年間でいろんなことがありましたけど、その中でいろんな人との出会いがすごく大事だなと思います。いい人もそうだし、よくない人もそうだし、自分が日々戦ったり、悩んだり挫けたりしり中でいろんな音楽ができていって、みなさんが聴いてくれるおかげで今の自分がいる。普段のライヴだと会場にいる人にしか言えないけど、今日はみんなに直接言えるので。本当にいつもありがとうございます。本当にありがとう」

星野が音楽を通して今まで出会った人、もう会えない人、そしてこれから出会う人たちへの感謝──それはこの配信ライブのタイトルであり、10月にリリースする10周年を記念したシングルボックスのタイトル「GRATITUDE」に込められたものでもある──を噛み締めながら解き放つようにして歌われた「Hello Song」。

そして星野はバンドメンバーを送り出すと、最後はたったひとりに戻って「私」を弾き語った。

〈あの人を殺すより 面白いことをしよう 悲しみと棒アイスを食う〉

こんな歌い出しから始まる、濃密なラブソングにも、生々しい私小説にも聴こえる楽曲をどこまでもリアルに体現できるポップアーティスト、それが星野源である。10周年イヤーは、続く。

●星野源が語るソロデビューからの10年、時代と戦い続けてきた歩み



「Gen Hoshino’s 10th Anniversary Concert “Gratitude”」
ZAIKOにて7月19日(日)23:59までアーカイブ配信
視聴料:視聴パス:¥3,500(税込)
※7月19日(日)19:30まで購入可能
購入・詳細:https://l-tike.com/hoshinogen

『Gen Hoshino Singles Box “GRATITUDE”』
2020年10月21日(水) 発売
価格:¥23,000+税
VIZL-1793【11CD+10DVD+特典CD+特典BD】
VIZL-1794【11CD+10DVD+特典CD+特典DVD】
※各シングル初回限定盤付属映像DISCは全てDVD、特典映像DISCのみBD/DVDの2形態(同内容・同一価格)
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