史上最高の「ムービー・バンド」25選

4位『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(2001)
ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ

インディペンデント映画『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』と同名のバンドが生まれた場所は、ニューヨークのオフ・ブロードウェイだ。そしてほとんどの優れたミュージカル作品がそうであるように、同作は歌とともにストーリーが展開する。だが、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』は『雨に唄えば』(1952)とは対照的な作品である。同作は、どちらかというとロック・オペラのような展開なのだ。ゴーゴーブーツを履いた主人公ヘドウィグが舞台の上でハードロックチューンから感動的なバラードへとスムーズに移行できる理由のひとつは、そこにあるのかもしれない。映画化後、同作は主役のニール・パトリック・ハリスをはじめとする豪華キャストとともにブロードウェイに復帰した。だが、ジョン・キャメロン・ミッチェル監督のオリジナルに勝るものはない。前6インチ、後ろ5インチ……残った“怒りの1インチ”について熱唱するヘドウィグは必見。

3位『あの頃ペニー・レインと』(2000)
スティルウォーター

実話によると、当時15歳だったキャメロン・クロウはローリングストーン誌にポコというカントリーロック・バンドの取材担当に抜擢された。クロウ監督の作品のなかでももっとも自伝的な色合いの濃い『あの頃ペニー・レインと』に登場する15歳の大きな瞳の少年の名前はウィリアム・ミラーで、彼が取材するのはスティルウォーターというバンドだ(1970年代に同名のバンドが実在していたが、それは偶然にすぎない)。ビリー・クラダップやジェイソン・リーといった70年代俳優が演じたスティルウォーターが架空のロックバンドのなかでも一線を画している理由は、彼らの音楽性ではなく、バンド全体の音楽性の深さがそれぞれのメンバーの意思決定に影響を与えた点にある。最終的に同作はひとつのバンドではなく、その時代の音楽の存在証明となった。良いものも悪いものも、そしてロバート・プラントのような“ゴールデン・ゴッド”も含め、スティルウォーターはまさに当時のロッカーの象徴なのだ。

2位『ブルース・ブラザーズ』(1980)
ブルース・ブラザーズ

40年ほど前に『サタデー・ナイト・ライブ』に登場した当初、ブルースをこよなく愛する黒いスーツ姿のダン・エイクロイドとジョン・ベルーシは同バラエティ番組のお笑いキャラだった。だが、ますます高まる人気とともに彼らはデビュー・フルアルバム『ブルースは絆』(1978)のレコーディングを行い、1980年にはなんとジョン・ランディス監督のアイコニックなコメディ映画の主人公にまで昇格した。その後の話は、誰もが知るところだ。エイクロイドとベルーシはジェイクとエルウッドのブルース兄弟として複数のライブをこなし、豪華なバックバンドまで手に入れた(バックバンドのメンバーには、ブッカーT&MG’s、バーケイズ、ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズなどのアーティストが名を連ねる)。そして同作には、アレサ・フランクリンやレイ・チャールズも出演している。1982年にベルーシがこの世を去ってもエイクロイドはたまにブルース兄弟復活を試みた。だが、スタックス・レコードばりのレヴューらしいスウィングを生み出す、神様からの贈り物のようなエイクロイドとベルーシのユニットに勝るものはない。

1位『スパイナル・タップ』
スパイナル・タップ(1984)

パロディバンドというコンセプトは、なにも映画『スパイナル・タップ』から生まれたものではない。それでも、多くの人はパロディバンド=架空のヘビーメタルバンド「スパイナル・タップ」というイメージをいまも抱いている。コメディ好きのオーディエンスが辛辣でありながらも笑えるタイトルと歌詞(「ベイビーは肉のタキシードみたいにぴったりフィットする/ピンクの魚雷をお見舞いするのが俺は大好きだ」)に夢中になる一方、十数名ほどの有名ミュージシャンは、同作が人気ミュージシャンの人生を正確に描いていると告白した(メタリカのラーズ・ウルリッヒが同作をホラー映画と評価し、「正常に機能しているバンドであれば、この映画を観てぜったいに恐怖で縮み上がるはず」と言ったエピソードは有名)。ユーモア、描写の正確さ、小さすぎるストーンヘンジの舞台装置が小人に扮したパフォーマーたち壊されそうになるシーンを除いても、劇中バンドのスパイナル・タップは結構いい。むしろ、かなり良い。クリストファー・ゲスト、マイケル・マッキーン、ハリー・シェアラーはあまりに長いあいだ同作の登場人物としてレコーディングやライブを行ったせいで、もともとは架空のバンドだったことを時々忘れてしまうほどだ。これだけの年月を経ても楽曲は色褪せていないし、ジョークはいまでも笑える。フェイク・バンドとしてはいまでも超一流だ。

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Translated by Shoko Natori

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