ディスコはポップの未来を担うか?

ダンスチャレンジは心の拠り所なのかもしれない

昨年秋に「ドント・スタート・ナウ」が公開されると、カークパトリックの懸念は完全に払拭された。70年代を思わせるヴァイブに、リスナーは大いに反応した。大ヒットした同曲はリパのキャリアをさらに推し進めただけでなく、現在のディスコブームの火付け役となった。70年代のファンクとディスコの要素を取り入れたドージャ・キャットの「Say So」は、同じくTop 100チャート入りを果たした。70〜80年代のダンスポップ色が強いザ・ウィークエンドの「ブラインディング・ライツ」は、リパの最新作と共鳴する部分が少なくない。シーンを席巻しているこれら3曲に共通するのは、同曲を用いたダンスチャレンジ動画がTikTokで流行したという点だ。



ディスコの起源がそうであったように、これらのポップヒットとアルバムは人々を踊らせるために生み出された。クラブやバーで踊ることが叶わない現在のコロナ禍において、ダンスチャレンジはユーザーたちの心の拠り所なのかもしれない。

「今の流行が始まる前は、自意識過剰気味で歌詞が重めのスローバラードがもてはやされてた」ウォーレンはそう話す。彼女はTikTokを意識して曲を作ることはないとしながらも、同プラットフォームが曲の人気に火をつけるきっかけになることは認める。「ユーザーがそういう音楽にすぐ飽きてしまったのは、今のような状況下でも前向きな気持ちになれる曲を求めたからだと思う」

ディスコはアメリカの東海岸で、黒人やラテンアメリカン、そしてLGBTQのコミュニティのサブカルチャーとして誕生したが、その認識は現在では大きく変わっている。自由の象徴だった70年代のディスコのシーンは、流行のダンスやファッション、そしてグロリア・ゲイナーやドナ・サマー等の圧倒的歌唱力を誇るスターたちを生み出した。ディスコのサウンドはヒップホップの基盤となり、初期のMCたちはディスコのブレイクにラップを乗せていた。

過去40年間に生まれたポップ・ミュージックは、すべてディスコの影響下にある。ここ20年では、マドンナやダフト・パンク等による局地的なリバイバル現象も見られた。

DJ兼アーティストであり、ディスコへの造詣の深さでも知られるRod Thomas(アーティスト名はBright Light Bright Light)は、リパの「ドント・スタート・ナウ」が「ヴィンテージなディスコの魅力をうまく再現している」としながらも、現在のブームをディスコの復権と呼ぶことには抵抗を覚えているという。「聴き手の気分を高揚させるディスコのサウンドは、常にファッションと密接に結びついていた」彼はそう話す。「ディスコという言語は多幸感に満ちていて、踊ることで痛みと混乱から自分を解放するものであるはずなんだ。闘争と抵抗、それがディスコのキーワードなんだよ」

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Translated by Masaaki Yoshida

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