ガガやアリアナの近作に貢献、無名のグラム・ロッカーがポップスの世界で成功できた理由

これまでレディー・ガガ、フォール・アウト・ボーイ、アリアナ・グランデ、ザ・チックスなどに曲を提供してきたジャスティン・トランター。(Photo by Noah Webb)

2020年はジャスティン・トランターの年となりそうだ。トランターの今年は2枚のメジャー・アルバムへの楽曲提供でスタートした。レディー・ガガの『クロマティカ』とセリーナ・ゴメスの『レア』だ。

そして最近の仕事としては、長い間待たれていたカントリーの人気女性グループ、ザ・チックス(旧ディクシー・チックス)の新作アルバムが挙げられる。さらに“彼ら”はシェア・ダイアモンドと一緒にHBOのリアリティ番組『We’re Here(原題)』のテーマ曲「I Am America(原題)」も作った。このテーマ曲はLGBTQ+コミュニティの強さを象徴するアンセムとなり、今年のエミー賞でベスト・オリジナル・ソング賞の最有力候補と噂されている。

【動画】ドラァグ・クイーンが多数出演する「I Am America(原題)」のミュージックビデオ

先月、複数のプライド・プレイリストが「I Am America」をフィーチャーして注目を浴び、ボブ・ザ・ドラァグ・クイーン、シャンゲラ、ユーレカ・オハラ主演でドラァグ・カルチャーを映し出す『We’re Here』も4月の初放送以来、大人気となっている。トランターも共同ライターのダイアモンドも、この曲をきっかけにクイアの声を高めたかった。ちなみにダイアモンドは黒人トランスジェンダーのシンガーソングライターだ。

「明らかに僕もこの曲の一部を担っているので、客観的に語るのは難しい。でもシェアのおかげでめちゃくちゃ笑える仕上がりになったよ」と、トランターがローリングストーン誌に語った。そして「番組のパワーをできるだけ曲に込めようと頑張ったし、シェアの人としてのメッセージを通して、番組が伝えたいことにスポットライトを当てようとベストを尽くした。黒人のトランスジェンダー女性が立ち上がって“私がアメリカよ”と歌い、それがエミー賞からも注目されたなんて、ぶっ飛ぶくらい驚いたし、とても美しいし……エミー賞の選考委員さんたち、正しいことをしなきゃダメだよ」と続けた。

自分を表す二人称として「彼ら(theyやthem)」を使うトランターにとって、音楽業界での成功にたどり着くまでの道のりは、回り道の多い険しい旅路だった。業界屈指の実力派クイア・ソングライターとして名を馳せる前のトランターは、きらびやかなこと好きでステージからダイブするグラム・ロッカーだった。イリノイ州出身、バークリー卒の“彼ら”が最初のレコード契約を手に入れたのは28歳のとき。セミ・プレシャス・ウェポンズというバンドのフロントマンをしていた頃のことだ。しかし、この契約は署名に至らずにあっという間に御破算となった。

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE