圧倒的なパワーが魅力、型にとらわれないアーティスト「MADSAKI」

村上隆との出会い

ー描いていて一番達成感のあった名画は?

MADSAKI:2回目に描いたモナリザは画期的だった。自分で練習用に描いただけなんだけど、あそこでスイッチが入って。そこでまたネジが二つくらい飛んじゃった感じ(笑)。

ーそこでネジが二つ飛んだ次は?

MADSAKI:村上隆さんだね。ある日朝起きたら突然、隆さんがインスタをフォローしてくれてたわけよ。絶対にニセモノだろうと思って、ポンって押したら、本当に本人で(笑)。隆さんの『芸術起業論』は、日本に帰ってきた時に買って、俺の6畳の部屋でずっと読んでた本だったの。隆さんは俺の中ではヒーローだから。今はそのヒーローと一緒に仕事をしてるわけだから、スゴいよね(笑)。

ー村上隆さんとの初対面はどんな感じでした?

MADSAKI:俺がマチスの絵をインスタでアップしてたら、「これいいね」ってコメントが英語で来たの。それで「買いたい」って来て、買ってくれて。その絵が横浜美術館での村上さんの「スーパーフラット・コレクション」展に飾られるっていう噂を聞いたから、呼ばれてないのに勝手に行っちゃったんだよね(笑)。行ったら、そこに村上さんがいて。「誰?」みたいなことを言われて、「マチスです!」って言ったら、「おまえがマチスか?!」ってなって(笑)。

ーそこから村上隆さんのカイカイキキの所属アーティストになるんですよね。

MADSAKI:「今度、Hidari Zingaroでやってみませんか? 来月ですけど」ってメールが来たんだよね。「はあ? 来月?!」みたいな。試されてるな、やるしかないなって(笑)。

ーそれが2016年の個展「HICKORY DICKORY DOCK」ですね。そこで安倍晋三の絵を描きましたよね。

MADSAKI:俺、陰謀論が大好きで、隆さんと陰謀論の話ばっかりしてたの。「だったらおまえ、安倍とかプーチンを描けばいいじゃん」って言われて。それで安倍の絵を描いて、折って、ガターンと落ちたみたいな感じにして。英語で「折れる」って「bent」だから、タイトルを「a bent」にして(笑)。プーチンもちゃんと描いた。こんなの売れるのかよ?って思ったけど、売れましたね(笑)。

ー2017年にカイカイキキギャラリーでやった「HERE TODAY,GONE TOMORROW」では奥さんを描いていますね。

MADSAKI:隆さんが「おまえのインスタを見てると、嫁しか出てこないんだよ。嫁を描け」って言ってきて。「エーッ?! マジで嫁描くの?!」ってなって。これは絶対にいじめだなと思って(笑)。

ー「こう来るの?!」っていう作品でしたね。「私小説的な表現へ到達した」みたいなレビューもありましたけど。

MADSAKI:そうそう。俺も意外だったから。あれを描くまでにもいろんなストーリーがあったし。嫁にしても半分ヌードだから、勘弁してよみたいな感じで。でもあの嫁の絵はあの時にしか描けないものだし、毎日見ている嫁だから感情が入っちゃうよね。最初は何だ?!って思ったけど、今何の絵を描くのが好きなのか聞かれたら、たぶん嫁シリーズを描くのが一番好きだって答えるよね。

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