PANTAと鈴木慶一が語る頭脳警察の50年と事件の真相、ロックの未来

PANTAと鈴木慶一(Photo by Hana Yamamoto)

反骨精神に貫かれた活動で数々の伝説を残したロック・バンド、頭脳警察のPANTA。ムーンライダーズの中心人物で、最近では映画音楽の作曲家としても活躍する鈴木慶一。日本のロック・シーンの黎明期から、二人はお互いに刺激を与えあってきた親友だ。

頭脳警察はドキュメンタリー映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』が7月18日から公開され、主題歌となる新曲「絶景かな」を発表したばかり。一方、鈴木慶一はKERAとのユニット、No Lie-Senseの新作『駄々録~Dadalogue』をリリースするなど、どちらも今なお現役で自分の道を走り続けている。そんな二人がコロナに揺れるライブハウスで対談。その日、頭脳警察は無観客で配信ライブを予定していて取材はその直前に行われた。伝説の三田祭事件の「その後」からロックの未来まで、二人のレジェンドが熱く語り合った!


三田祭事件の「その後」

ー慶一さんは出演もされていましたが、『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』を観てどんな感想を持たれましたか?

鈴木「ほんとによく出来たドキュメンタリーで、しかも、あんなに昔の映像が残っているのが非常に羨ましかったね。そういう映像が残っていた、記録しようと思っていた人がいた、というのが頭脳警察の魅力なんじゃないかなと思います。俺たちなんて何にも残ってないからね」



ーはちみつぱい(ムーンライダーズの前身バンド)の映像は残ってないんですか?

鈴木「ない、ない。何もないよ」

PANTA「俺たちの時代って、まだビデオテープじゃなかったからね」

鈴木「そう、フィルムでしょ。8ミリを持ってる人は金持ちだった」

ー懐かしい映像はありました?

鈴木「TOSHIと二人でやってる映像を観て、野音に一緒に出た頃を思い出したよ。『怖いなあ』と思ってた(笑)」

ー当時から、頭脳警察は怖いバンドというイメージがあったんですか?

鈴木「あった。バンドを取り巻いている人たちの雰囲気とかも含めてね。それを決定づけたのが三田祭だね」

ー映画にも出て来ましたね、三田祭事件。はっぴいえんどの出番に頭脳警察が乱入してライブをやって、はっぴいえんどは1曲しか演奏できなかったという。

鈴木「はちみつぱいがステージを終えて、次がはっぴいえんどだったんだけど、そこに頭脳警察が入って来て俺たちとすれ違ったんだよ。『あれ? 次はっぴいえんどなのに、なんで頭脳警察なんだろうな?』と思いながら楽屋の教室に戻ったんだよ。そこから先はライブを見ていないから、何が起こったのかわからない。ただ、今だに憶えているのが、風都市の石塚君(はっぴいえんどやはちみつぱいが所属した音楽事務所、風都市のスタッフだった石塚幸一)が傘を持って震えながら『今からあいつらのステージに殴り込む。お前ら危ないから帰れ!』って言ってたこと。俺たちは『飲みに行こうぜ』って、そのまま帰った」

ー帰っちゃったんですか?

鈴木「俺たちは予定した曲を全部やったし、何も被害を受けてないからね。紛争より酒宴だ」

PANTA「邪魔してないから、俺たちは(笑)」

鈴木「非常に紳士的なステージ・ジャックだったね(笑)」

ー三田祭の事件以降、頭脳警察と風都市の間がぎくしゃくしたそうですね。

PANTA「その前から、ちょっと溝があったんだよね。だから、TOSHIが『このまま帰っていいのか』って言ったんだと思うよ」

ー溝があった、というのは何か原因があったのでしょうか?

PANTA「例えばBYGとかのブッキングを風都市がやってたんだけど、頭脳警察はあんまり声がかからなかった。三田祭のオファーも風都市からは話が来てなかったと思う。大学側から『オファーしてるんですけど話を聞いてませんか?』って言われて、『あ、そうなんだ』って、ちょっと遅れてったら『頭脳警察がやる時間ないよ』って言われたんだよ。『やる時間ないよ』ってことは、きっと出る予定になってたんだよね。で、『じゃあ、しょうがない。帰るか』って駐車場まで行ったら、TOSHIが『このまま帰るのかよ』って」

鈴木「はっぴいえんどは1曲しかやらなかったけど、ほんとは5曲ぐらいやれたんじゃないかと思う。憶測だけどね。なぜ、1曲しかやれなかったかというと、その日、たまたま小坂忠さんの結婚式があって、そこに行かなくてはならなかった」

PANTA「そうなんだよ。そういう偶然が重なっちゃった。はっぴいえんどは怒ってたと思うよ」

鈴木「俺たちのライブに乱入されていたら、PANTAとの関係は違っただろうね。不思議なもんだよ、運命とは」

PANTA「で、三田祭が終わって1週間後、女の子と千川通りのメキシコ料理屋に入ったの。そしたら、細野(晴臣)くんがいるんだよ。同じ女連れで。お互い気まずいわけ。トラブルの後だから。で、『やあ』って違うテーブルに座って、しばらくしてパッと見たらいなかった(笑)。でも、この前、エンケンのイベントの時に慶一が仲に入って細野くんとハグしたのよ」

鈴木「40年以上経って楽屋でね」

ー良かったですねー。

PANTA「鈴木茂くんとはすでにムッシュの仲介で和解してるのね。それで一緒に仕事をしたのが堀ちえみだった。俺が曲を書いて鈴木くんがアレンジしてくれた」

鈴木「松本(隆)さんとは一度、和解のチャンスがあったんだよ。2000年にシンガー・ソングライターのクミコさんのプロデュースを二人でやっていて、その時に『ベースにPANTAを呼んで、ドラムを隆さんでやれば』という話になった」

PANTA「そうなの? やれたら面白かっただろうな」

鈴木「『うん、いいよ、それでも』ってなったけど、いろいろあって実現できなかった」

PANTA「まだ、松本くんとは(和解する)チャンスはあるけど、大瀧(詠一)くんとはもうない。会いたかったな」

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