PANTAと鈴木慶一が語る頭脳警察の50年と事件の真相、ロックの未来

ーこの2枚のアルバムを発表した後、PANTAさんはスウィート路線と呼ばれるポップなアルバム『KISS』(1981年)を発表します。映画では、ファンがスウィート路線に対して議論しているシーンがありましたね。

PANTA「当然、反発されるだろうなとはわかってましたよ。レコード会社も大反対、事務所も猛反対。誰一人として賛成するやつがいない。慶一も賛成してくれない(笑)」

鈴木「俺は逃げたからね(笑)。というよりも、これは違う人が手掛けた方が良いと思った」


PANTA『KISS』収録の「想い出のラブ・ソング」

PANTA「でも、その時はそういう作品をやりたかったんだよ。自分がやりたいっていうことを隠して、ファンが望む俺のイメージを演じるのは失礼だと思った、エンターテイナーだったらそうしなきゃいけないんだろうけど、俺はロックで生きて来たんだから、自分のやりたいことをやるしかないだろうと。それで作品を出したら総スカンです。音楽評論家からはボロカスに言われた。しかも、(大瀧詠一の)『A LONG VACATION』とぶつかったんだよな」

鈴木「俺はスウィート路線ってイメージ的に『A LONG VACATION』と似た方向だったと思ってたよ」

PANTA「そうなんだよね。でも、向こうのほうが良かった。やるんだったら、あそこまでやりたかったな」

ー三田祭事件の因縁を感じさせる偶然ですね。スウィート路線をやりたいと思われたのはどうしてだったんですか?

PANTA「ああいう音楽は、本来だったら18とか19(歳)でやってなきゃいけなかったものなの。ホリーズとかキンクスとか、10代の初期衝動から生まれた音楽をやりたくてロックを始めたのに、頭脳警察っていう道を選んじゃったからやる余裕がなかった。本来だともうちょっとロック色が強い、ビート感溢れるアルバムになる予定だったんだけど、レコード会社が『どうせやるんだったら徹底的にスウィートにしよう』って、レコードを売ろうとして下世話な欲を出したんだよ」

鈴木「で、CMのタイアップは決まるわ、不買運動は起きるわ(笑)」

PANTA「『PANTAを殺して俺も死ぬ!』っていう手紙が来たよ。何が悲しいって『あたし(女性)』じゃなくて『俺』だってこと。バカヤロー!(笑)」

ーそういう話を聞くと頭脳警察とファンとの関係性がわかりますね。「慶一を殺して俺も死ぬ!」っていうムーンライダーズのファンはいない気がします。

鈴木「そりゃ、いないよ(笑)」

PANTA「でも、慶一は良い友達がほんとに多いよね、ブレインも含めて。だから、慶一を介して知り合った人って多いんだよ。あの当時、お互いがドアになって、いろんな人と知り合った。慶一はそれまで知らなかった俺のまわりの人を知る。俺も慶一を介していろんな人と知り合いになった。なかには面倒くさいやつもいたけど(笑)」

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