ストーンズとカンのドラムから考える現代のリズム 鳥居真道が徹底考察

「Honky Tonk Women」のドラムは、コーラス部分に突入するとキックが増えて歯抜けのハンマービート的なパターンになります。この箇所はハットとキックの関係が安定しているように感じます。しかし、安定したかと思いきや、テンポが上がります。このリズムの伸縮性こそがストーンズのサウンドを特徴付けていると考えています。

さんざん「Honky Tonk Women」を聴いたあとに、改めて「Scarlet」を聴くとキックがとてもタイトに感じられます…。恐るべし、ブルース・ローランド。

「Scarlet」を聴いて、ジガブーやリヴォンの演奏を連想したりもしましたが、それより先に想起されたのはドイツのカンでした。より具体的に言えば、ダモ鈴木がボーカリストだった時代のカンです。曲単位でいうと「Halleluhwah」。DJ的な発想で「Scarlet」から「Halleluhwah」につなげたいという欲望が湧き上がったのです。片やロックのアイコン的なストーンズと、片やオルタナティブ・ロックの始祖的な存在のカンが、リズムの類似でつながるというある種の突飛さに、個人的にはわくわくするのですが、「Scarlet」と「Halleluhwah」を聴き比べるとやはり別物であることは否めません。

カンのドラマー、ヤキ・リーベツァイトはサブディビジョンを16分音符とした、シンコペーションとゴーストノートを多様するファンク的なパターンをよく演奏します。一方で、ハネない、揺れない、癖を出さないというリズム面でのコンセプトが彼の特徴でもあります。そんな彼を、バンドメンバーは「half-man, half machine」と表現しています。ここで少し補足すると、もちろん曲によってハネることもあります。例えば「I’m So Green」は若干ハネています。

機械仕掛けのようなタイム感で演奏されるヤキのドラムは、味や匂いを排して、非常にドスが利いたクールネスを醸しています。他方、ヤキは自分が機械的と言われることに関してこのように言っています。曰く「私は機械とは違って他の人の演奏に反応することができる。これこそが機械と人間の一番の違いだ」と。このことは「half-man, half machine」でいうところの、前者が「half machine」、後者が「half-man」に該当すると言えます。

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