ザッカーバーグCEO、独占禁止法に関し中国企業を理由に正当性を主張

2019年10月25日、米ニューヨーク州のペーリー・メディアセンターにてFacebookの新機能「News」タブについて語るマーク・ザッカーバーグCEO。 (Photo by Mark Lennihan/AP)

Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは、7月29日に行われる反トラスト法(独占禁止法)調査をめぐる公聴会で、SNSプラットフォームの支配的立場が米市場のリーダーシップにおいて必要不可欠であると主張する方向だ。

米現地時間7月29日、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは、彼の人生でおそらくもっとも注目されている会議に参加する。ザッカーバーグ氏は、反トラスト法(独占禁止法)の調査を行なっている米議会下院司法委員会(以下、下院司法委)で証言するのだ——それもオンラインで。下院司法委は1年以上にわたってGAFAこと米IT大手の独占的となり得る慣行の調査を続けており、FacebookのCEOは、Amazonのジェフ・ベゾス氏、Appleのティム・クック氏、Googleのスンダー・ピチャイ氏といった最高経営責任者たちとともに29日に証言、というよりは弁明を強いられる。

どうやらザッカーバーグ氏の弁明の方向性は固まったようだが、それがじつに馬鹿げている。

米ブルームバーグニュースが報じたところによると、ザッカーバーグ氏は、Facebookに競争法違反の責任を負わせることは見当違いの行為である、なぜなら、それによって中国が市場で有利なポジションを手に入れるからといった内容の主張を展開するもようだ。「ザッカーバーグ氏は、自身の会社を競争的で予測できない市場におけるアメリカ流サクセス・ストーリーを体現した会社として描写する心構えだ。この市場はまさにいま、中国発SNSアプリ(TikTok)の世界的な人気によって脅かされている」とブルームバーグニュースは報じた。

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ブルームバーグニュースが指摘するとおり、ザッカーバーグ氏は過去にもこのような主張を繰り広げてきた。2019年に米議会で「似たようなアイデアの商品をいまから数カ月後に発表するため、中国は迅速に動いている」とFacebook独自の仮想通貨「リブラ」について語る一方で警鐘を鳴らし、「アメリカがイノベーションを実施しないなら、我々の財政面でのリーダーシップは保証できない」と発言した。

29日の公聴会は、ヘイトスピーチやデマ情報の拡散を助長したとしてFacebookが非難の的となっている最中に行われる。ジョージ・フロイドさんの死に抗議して暴徒化した人々を「THUGS(訳注:悪党やチンピラを意味する人種差別的な言葉)」と呼び、射殺されるべきだと訴えたトランプ大統領の投稿をFacebookが放置したのをきっかけに、コカ・コーラやユニリーバといった大企業は大々的な広告ボイコットキャンペーンに打って出た。それに対するザッカーバーグ氏の反応は、表面的な変更や改善に向けてのあいまいな約束だった。それに加え、ある監査によって「公民権の妨げ」となるヘイトスピーチを容認するFacebookの慣行が明らかになり、従業員は同社が人種偏見を排除するためのリサーチを怠ったと抗議した。

29日、議員たちはFacebookがヘイトスピーチとデマ情報の拡散を助長したとザッカーバーグ氏を厳しく尋問することは可能だが、その日は競争法違反がおもな議題となる。Facebookの場合は、InstagramやWhatsAppといった潜在的なライバル企業を買収した経緯や、VineにFacebookの友達とつながることを禁止したように、他社をいじめるような行為が尋問の対象となる。おそらくザッカーバーグ氏は、InstagramとWhatsAppの成功はおもにFacebookのおかげであり、ただ単に市場を独占する可能性のある他社を買収していたわけではないと主張する、というのがブルームバーグニュースの見解である。

どこまでザッカーバーグ氏が古き良きアメリカ流ハードワークを屈指し、Facebookには同じような独占的行為に走る他社を妨害する権利があると主張するかはわからない。だが、彼の主張が下院司法委で通用する可能性は低そうだ。それに対し、議会が進めようとしている法案が成立すれば、中国のライバル企業は自由に活動できるようになるかもしれない。現実では実施されていないにせよ、独占的な支配ではなく、競争にもとづく自由かつ公平な市場は、米企業の中核を担う理念だ。こうした理念の欠如と国営企業のトップと政府関係者同士の強力な縁故主義は、国家主体の中国経済の本質のようなものである。




Translated by Shoko Natori

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