「セックス・マシーン」誕生50周年 ブーツィー・コリンズが明かすJBファンクの真髄

ジェームス・ブラウンのバックで演奏するブーツィー・コリンズ

1970年7月にシングルとして発表された「セックス・マシーン」は、ジェームス・ブラウンの新たな黄金時代の幕開けを飾った。当事者の一人であるブーツィー・コリンズが、ソウルのゴッドファーザーと作り上げた金字塔を振り返る。


いきなり訪れた「超次元の体験」

ジェームス・ブラウンはバスには乗らなかった。彼の移動手段はプライベートジェットだったからだ。それだけに、1970年の春にナッシュビルで行われたライブの後、ソウル・ブラザー・ナンバー・ワンことブラウンが、その右腕であるオルガン奏者のボビー・バードと一緒に、彼の新たなバックバンドのツアーバスに入ってきた時、現場にいた誰もが思わず身を固くした。

「まるで『トワイライト・ゾーン』のワンシーンだった。何かのドッキリかと思ったくらいさ」ベーシストのブーツィー・コリンズは笑ってそう話す。その数カ月前、ブラウンのバックバンドのメンバー全員がブラウンに反旗を翻したため、彼はシンシナティを拠点としていたザ・ピースメーカーズのメンバーだったコリンズと、彼の兄でギタリストのフェルプス・”キャットフィッシュ”・コリンズを迎え入れて結成した新バンドをThe J.B.sと名付けた。「俺たちはライブを終えたばかりで、汗だくのまま冗談を言い合ったりしてた。そんなところに、てっきり次の公演場所に向かって飛行機で移動したと思ってた彼がバスに入ってきたもんだから、みんな縮み上がってたよ」

●【動画を見る】ブーツィー・コリンズも参加した、1971年の「セックス・マシーン」ライブ映像

「完成したばかりの新曲を聴かせたいから、彼も俺たちと一緒に次の公園場所までバスで移動するっていうんだ」ブーツィーはそう話す。「ジェームスとボビー・バードは、俺とキャットフィッシュのすぐ前の席に座ってた。彼は紙袋を出してきて、『ボビー、今から新曲を歌うから歌詞を書き留めてくれ』って言ったんだ。彼はこう歌い始めた(ジェームス・ブラウンの声を真似て)『セックス・マシーンの気分だ イクぜ(Yeah, I feel like a sex machine. Get up.)』。ボビーは歌詞を書き留め、ベースとギターをそれぞれ手にしてた俺とキャットは、彼の歌に合わせて即興でリフを弾いた。『いい感じだ。聴かせて良かったよ』ってジェームスは言ってくれたよ」。ブーツィーはそう話し、豪快な笑い声を上げた。

「セックス・マシーン」の原型は既に出来上がっていたが(後にブラウンは同曲のアイディアを、彼が複数の賞を獲ったNashville Municipal Auditoriumでのショーのポスターの裏に書いたと本誌に語っている)、その時点ではダイヤの原石に過ぎなかった。しかし、その曲を早急にレコーディングしたがったブラウンは、信頼を寄せるシンシナティのKing Studiosの専属エンジニア、ロン・レンホフに電話をかけ、ナッシュビルのStarday-Kingスタジオに駆けつけて欲しいと懇願した。RJ Smithの著書『The One』によると、飛行機に間に合わなかったレンホフは、シンシナティからナッシュビルまで車を5時間走らせ、到着するやいなやレコーディングを始めたという。

Translated by Masaaki Yoshida

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