全てはエルヴィスから始まった 1956年と1957年のプレスリーを聴く





お聴きいただきましたのは1956年「All Shook Up(邦題:恋にしびれて)」、そして2作目の映画『さまよう青春』の「Mean Woman Blues」。「All Shook Up」は30週間もトップ100に入っていたというエルヴィスの中でも一番息の長いヒットになりました。「Mean Woman Blues」は最初の「I got a woman means as she can be」という部分でやられましたね。これは1963年にロイ・オービソンが歌ってヒットしていて、山下達郎さんがロイ・オービソンで好きだと言っていました。でもエルヴィスの映画『さまよう青春』はヒットしなかったんです。これがビートルズとの違いでしょうね。エルヴィスの映画は2週間ほどで公開が終わってしまったりしました。『さまよう青春』は1957年7月にアメリカで公開されたのですが、日本で公開されたのは1958年4月なんです。配給会社がなかなか腰をあげなかった。この映画の中では、彼は食料品店のトラックの運転手になっていて、歌手として大成功するというサクセスストーリーなのですが、主人公としては貧しくてなかなか恵まれず、ちょっと不良っぽい若者というのが多くかった。音楽もそういう風に見られていましたからね。その中でトム・パーカーさんというマネージャーがいて、エルヴィスの良さを保守的な人にも伝えないといけないという意図があったんでしょうね。この映画の後にアルバム『エルヴィス・クリスマス・アルバム』が作られているんです。その中から2曲お聴きいただきます。





1957年発売のアルバム『エルヴィス・クリスマス・アルバム』から、「ホワイト・クリスマス」、「サンタ・クロースがやってくる」の2曲をお聴きいただきました。「ホワイト・クリスマス」はビング・クロスビーの歌い方が世界中のスタンダードになっていますけど、これは全然違う歌い方でしょう、ロックン・ロール。クリスマスというやつですね。「サンタ・クロースがやってくる」のあの歌い方も、まあ気持ちいいこと。今回エルヴィスの特集をやりたいなと思ったのは、ビートルズはあれだけ語られているのに、エルヴィスはもうちょっと語られていいよなっていう想いがあったんです。ビートルズは4人メンバーですし、バンドですし、楽曲もオリジナルですから、作品論も人物論もバンド論も色々な語り方ができる。エルヴィスはそういう意味で言うと、歌っているだけと言うことになりますから語り方が少なくなるのはしょうがないんですけどね。でもエルヴィスにもうちょっと光を当てたいなっていう想いがあって、特集をお願いしたというのがあります。

Rolling Stone Japan 編集部

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