トランプ大統領、TikTokの次はWeChatも 米企業と取引禁止

Sipa USA via AP (Photo by Sheldon Cooper / SOPA Images/Sipa USA)

米現地時間8月6日夜、トランプ米大統領は中国のバイトダンス(字節跳動科技)と米国企業の取引を45日後に禁じる大統領令に署名した。また、中国ネットサービス大手テンセント(騰訊)が運営する対話アプリWeChat(微信)も、TikTokとは別の大統領令のターゲットになった。

急成長中の大人気動画投稿アプリTikTokの米国での使用禁止をめぐる緊張と脅迫が数週間続いたあと、トランプ米大統領は現地時間8月6日の夜に大統領令に署名した。これにより、TikTokを運営する中国のバイトダンス(字節跳動科技)と米国企業の全取引が45日後に禁じられることになった。

これは、TikTokを米企業に売却するという判断を9月15日頃までに下すようバイトダンスに求めたことをトランプ大統領が報道陣に語り、その日までに交渉が成立しなかった場合は、TikTokの米事業を強制的に閉鎖するとほのめかした数日後の出来事である。TikTok買収には、米IT大手のマイクロソフトが名乗りを上げている。マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)とトランプ大統領の会談後、同社は8月2日に公式ブログに投稿した記事のなかでTikTok買収に向けて交渉中であることを認めた。さらにマイクロソフトは、9月15日までに合意を成立させる意思を表明した。

しかしながら、6日の大統領令によってこの交渉は複雑さを増したようだ。「とりわけ、中国で開発され、中国企業が運営するモバイルアプリの米国での拡大は、米国の安保、外交政策、経済を脅かし続けている」というのが大統領令の主張だ。「TikTokをはじめとするモバイルアプリの脅威に対処するための対策をいますぐ講じなければならない」と大統領はTikTokを名指しした。大統領令には、バイトダンスとのあいだで禁止される商取引の詳細が記されていないだけでなく、マイクロソフトの取引状況にも言及していなかった。

TikTokと中国企業のつながりと、ささやかれている安保への脅威をトランプ政権は何度も引き合いに出し、TikTokを禁止すると脅し続けてきた。政府が米国ユーザーのデータのプライバシー問題を懸念する一方、TikTokは中国政府にデータを提供することはなく、サーバーは米国、バックアップのサーバーはシンガポールにあると主張している。

6日の早朝、米上院は政府職員の携帯電話へのTikTokダウンロードを禁止する法案を全会一致で可決したと米政治専門誌The Hillは報じた。

音楽業界にとって、いまやTikTokは極めて重要なマーケティングおよび新人発掘ツールだ。レコード会社は同アプリを活用してバイラルヒットを仕掛けたり、将来の契約アーティストを発掘したりしているのだ。リル・ナズ・Xの空前絶後のヒット「Old Town Road」のようなメジャー作はもとより、最近のものではミーガン・ジー・スタリオンの「Savage」やロディ・リッチの「The Box」など、TikTokでブレイクしたあとにナンバー1シングルに輝いた楽曲は数知れない。

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本誌はTikTokにコメントを求めたが、同社はすぐには応じなかった。だが、同アプリの将来をめぐる緊張が高まるにつれて、TikTok米国の統括部長のヴァネッサ・パパス氏は、米国での事業を継続するとユーザーに発表した。「皆様からあふれんばかりの応援のメッセージをいただき、心から感謝申し上げます。私たちは、どこにも行かないつもりです」とパパス氏は述べた。

中国ネットサービス大手テンセント(騰訊控股)が運営する対話アプリWeChat(微信)も同じような感情にもとづく別の大統領令によって政府の標的にされている。ゲーム界の王者として知られるテンセントは、ワーナーミュージック・グループとユニバーサルミュージック・グループ、さらにはSpotifyの株式9パーセントを取得している。どうやらこの大統領令は、WeChatだけをピンポイントで狙ったもののようだ。

Translated by Shoko Natori

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