ミュージシャンの社会の中での地位、手島将彦と竹田ダニエルが語る

ーアメリカでは、メンタルヘルスへの理解が日本よりも進んでいるとよく耳にします。

竹田:間違いなくそうですね。例えば学校では発達障害への理解が進んでいて、子供それぞれの個性や得意不得意に合わせて考えるということも広まっていると思います。発達障害があることは決して悪いことではなくて、むしろ個性や特性として特別なものだったりするわけですよね。この子はただやる気がないだけだと断言してしまうんじゃなくて、その子に合う対応をしてくれればこの子も伸びるという考えは、親や学校の風潮にはなっています。ミュージシャンで言うと、日本とちょっと違うことは、ドラッグユースやアルコール中毒で何人も亡くなったり、ツアーがキャンセルされることがずっと問題視され続けていることです。でも、別に隠される問題ではなく、これにどう対処したらいいのかという研究に基づいたリサーチやプロを交えて、音楽関係の分野にトピックとして常に上がっていて。一般企業でもそういう社内対策はしていますし、ある意味トレンドと言ってもおかしくないと思います。

手島:日本でもようやく、2022年から高校の保健体育でメンタルヘルスが必修になるんですよ。ただ、市民レベルではまだまだ関心が低い。日本の音楽産業にもアプローチして、もっとメンタルケアについての啓蒙活動をしませんかって話をしてきたんです。でも、今発言力を持っている方々は、なんだかんだ生存者なんですよね。全く理解しないわけじゃないし、「メンタルケア大事だよね!」とは言うけれど、「でも自分は大丈夫だった」「担当したアーティストは乗り越えたから大丈夫だ」みたいな意識から抜け切れない方も多いんです。

竹田:すごく分かります。例えば、多様性なんかも今までずっとあった事実なのに、それに対する言葉や知識、概念が根付いていないだけで無いことにされていた。今すぐ変わらなかったとしても、こういう問題があって解決策があるかもしれないって提示し続けるのは、誰の世代でも責任はあると思うんです。

手島:所謂マイノリティの人に対して、何かの役に立つからとか、優れている部分があるからオッケーみたいなことを言う人がいるじゃないですか。存在することに勝手に条件とか価値をつけちゃいけないんですよね。世の中はそもそも多様なんです。軋轢も摩擦も生じるけど、それぞれの個は全て基本的には尊重すべきで、どうやったら上手く尊重していけるやっていけるんだろうってちゃんと考えないといけないんですよね。

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