ミュージシャンの社会の中での地位、手島将彦と竹田ダニエルが語る

竹田:これまでの音楽は、現実逃避の大衆娯楽ビジネスとして消費されていたんじゃないかと思うんですよ。現代ではそういうものが価値でもないし、むしろ、ものすごく都合の悪い世の中で現実逃避を歌うのは本当に本物なんだろうか? って新しい価値観が生まれてるんじゃないかと思うんです。

手島:THE 1975が「エスケーピズム(現実逃避)の時代はもう終わった」ということをインタビューで言っていました。今は何かしらの価値や意見をちゃんと提示していかなきゃいけない世の中なのだっていうのは間違いなくて、それは音楽も例外ではない。つまりちゃんと物を言った方がいいってことですよね。

竹田:物を言うということでいうと、自分が一番問題視してるのは、政治的な発言をするなとか、BLMについて声をあげようということ自体が抑圧だと思われていることなんです。メンタルヘルスについてもそう。声をあげようと言ったら、自分の辛いことを言いたくない人だっているだろ! みたいな負の同調圧力によって、何かを変えようと頑張ろうとする人たちが犠牲者になっていると思うんです。SNSとか外に意識がずっと向いているような社会において、音楽っていうのはどんな媒体で聴いても自分の内面と向き合う時間だと思うんです。そういう音楽を作っているアーティストが発言することの社会的な重さって、すごく大事だと思っていて。勉強してないのに言うなとかって反発があっても、周りの人も含めて応援するなり、自分たちの信頼できる人たちと支え合っていくっていうのが本当に大事で。自分が関わってるアーティストとは本当に毎日のように話し合ってるんですけど、本人らもすごく不安になるんですよね。結局、自分が自信を持って正しいと思っていることはやるべきだし、逆に正しいと思わないならやらないべきだし、みたいなことはずっと言うようにはしていますね。

―以前のTwitter上での「#検察庁法案改正反対」の話もそうですけど、意見を表明するミュージシャンもたくさんいる。でもやっぱりSNS上では何にも知らないくせに発言するな、みたいな声もあったじゃないですか。事務所や所属してるレコード会社との関係もあって、意見を言いたくても言えない著名人っていうのが多いのかなって。

竹田:大手レーベルに所属しているミュージシャンたちは、そのレーベルに入った時点で自分はそういう発言ができなくなる覚悟が必要で、そこはコントロールするつもりないんですよ。そこにいるミュージシャンと、インディペンデントで言いたい意志のあるミュージシャンを同じ土俵に立たせたくないんですよね。インディペンデントであるっていう大きな利点は自分で自分の方針を決められる、かつ、自分の方針についてくれるようなファンやスタッフとコミュニティが作れるっていう部分。せっかくそこに自分の身を置いているにもかかわらず、大多数の資本主義の社会においての外部からの同調圧力に屈してしまうアーティストや、周りの人がそれを助長してしまうことが一番の懸念なんですよ。

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