ミュージシャンの社会の中での地位、手島将彦と竹田ダニエルが語る

手島:ミュージシャンも1980年代、1990年代なら、内面的な苦しみに見合うくらいのミリオンセラーみたいなものも得られたかもしれないですよね。でも現代はそうじゃない。特に音楽については、単純に金銭的な価値だけを追っかけるんだったら別の商売やった方がいいって皆が薄々感づいている。それでもやるならば、何を得て、何を発信しようと思って生きているのかを考える必要性はあると思うんです。

竹田:たしかに、何のためにやってるのかを世界が見失ってる。例えば自分はSpotifyにサブミッションする文章や、SNSでの展開とかをサポートすることが多いのですが、その中で最初に物凄い時間をかけてやるのが、ミュージシャンの意思確認なんです。要は、何のために君たちは音楽をやっていて、誰に聴いてほしくて、この曲を聴いたことによって何を得て欲しいのか、そもそもこの曲は何の意味があるのかという確認。こちらから訊かないと意識したことがない人も結構いるし、再生数が増えればいいという執着がある人たちも意外と多い。でも、サブスクの時代において、自分が本当に置いている価値を届けて、人間的な反応をもらえるとか、そもそも自分が出す意義に立ち戻って、向き合うことが一番の達成感だと思うんですよ。音楽活動でやる全てのことを何のためにやってるのかを常に考えるのが一番自分と向き合うのに近いんじゃないのかなって思います。

手島:音楽学校で教えている時、学生が曲を持って来て、これどうですか? って聴かせてくれることもあるんです。そこで最初に訊くのが、「どう思うも何もまず自分が何をしたいんだ?」って話なんですよね。自分がやりたいことができているんだったら、僕ははっきり言って何も言うこともない。逆に、こうしたいけど何かが足りないから、っていうアドバイスを求めているなら何か言うことはできるんですけどね。その「こうしたい」というのが「売れたい」ということの場合それが本心ならいいんですけど、何も考えずに「売れなきゃいけない!」と思っている人も少なくはないです。

竹田:マインドフルネスを流行らせたくて。人間関係においてそれが今本当に欠けていると思っていて。アーティストが関係者と関わるときも、とにかく何をやりたいか、その本質的な何かを知ることを恐れないで、お互いが目指しているところに一緒に行けるポジティブな循環を意識するようになってくれればなって思います。

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