Facebook広告ボイコット運動、音楽業界の大手企業が賛同しない理由

Facebook広告のボイコット運動に賛同する企業は1000社以上に広がった。 Uli Deck/picture-alliance/dpa/AP

Facebookによるヘイトスピーチに対するポリシーに反発して1000以上の企業がFacebookへの広告掲載を見送る中、音楽業界の多くの企業はボイコットしないどころか広告を増やしている。なぜか?

2020年6月30日、コーチ・ギター・ストラップは、同社の商品を購入しようとしていたある人から警告のメッセージを受け取った。新品のギターストラップを購入しようと商品を探していた男は、エディー・バウアー、マグノリア・ピクチャーズ、パタゴニア、ベン&ジェリーズなど多くの企業がFacebookによるヘイトスピーチへの対応(或いは放置)に抗議して同プラットフォームへの広告掲載を中止している時期に、コーチがFacebookに広告を掲載していることに憤慨した。彼は自分の意見を伝えるため、コーチの創業者ダニエル・パーキンズ宛てにメールを送った。

メッセージは「私はあなたに考えを変えてボイコット運動に加わってもらいたい。実現したら御社の商品を購入するだろう」といった内容だった、とパーキンズは振り返る。「私はすぐに“あなたの言う通りだ。我々は了解した”と返信した。そして7月に入ってすぐに私はFacebookのダッシュボードにログインして、全ての広告掲載の設定を先延ばしした。」

コーチをはじめとする1000社以上が、「Stop Hate for Profit(ヘイトで儲けるのは止めよう)」のスローガンを掲げるFacebook広告のボイコット運動に賛同し、Facebookと同プラットフォームに関連するソーシャルメディア(Instagram等)への広告掲載を一時停止した。Stop Hate for Profit運動のウェブサイトでは、Facebookが「米国における人種間の平等を訴える人々に対する暴力を煽る行為を助長」し、「Facebook上の選挙妨害行為を見て見ぬふりをしている」と批判している。有力な複数の人権活動団体も、広告ボイコット運動の支持を表明した。7月初旬、NAACPのCEOを務めるデリック・ジョンソンはFacebookについて、「自プラットフォームが実質的に危害を及ぼす行為に利用されていることに気づく文化的感覚に欠けている」か、或いは「全て承知の上で、人々を擁護することよりも利益を優先した」かのどちらかだ、とコメントしている。

コーチ以外にも多くの企業が広告ボイコット運動に参加しているが、音楽業界では運動へ積極的に賛同する企業は浮いた存在になっている。同業界では、Stop Hate for Profit運動についてほとんど無関心のままだ。広告に関するデータを扱うパスマティックスの調べによると、ユニバーサルミュージックグループ、ソニーミュージック、ワーナーミュージックグループ、Spotify、TikTokなど業界大手は皆揃って、6月も7月もFacebookやInstagramへの広告掲載を継続している。主要ディストリビューターや有名アーティストの多くもまた、Stop Hate for Profitのウェブサイトに名を連ねていない。

Translated by Shoko Natori

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