Facebook広告ボイコット運動、音楽業界の大手企業が賛同しない理由

エレクトロニックのレーベルであるニンジャ・チューンも、「ソーシャルメディアが人間性の形成にどれほど多くのポジティブな影響を与えているのかは計り知れない。しかし時には、我々が嫌悪する考え方を反映したり拡散しているように感じる。だから抗議活動に参加することは重要だと思う。」

それに対してFacebookは、「私たちは、コミュニティーの安全を守るために毎年多額の投資を行っており、外部専門家と協力してポリシーの見直しと改善を続けている。まだ課題が多いことは承知している。私たちは、人権団体やGlobal Alliance for Responsible Media(GARM)やその他の専門家たちと連携し、対策のためのツール、テクノロジー、ポリシーの開発を続けていく」と表明した。

音楽業界の中でFacebookへの広告掲載を中止したのは、プラットフォームの広告にそれほど多額の投資をしていない中小企業だった。対照的に、パスマティックスのデータによると、SpotifyはFacebookとInstagramの広告に数億円を注ぎ込んでいる。新型コロナウイルスの感染拡大が始まった最初の数ヶ月間、同社の広告料は一時的に落ち込んだものの、ボイコット運動が勢いを増す中で6月は400万ドル(約4億2200万円)以上を費やした。さらに7月は200万ドル(約2億1100万円)以上だった。

ユニバーサルとソニーがFacebook 広告に費やす金額は、Spotifyほどではない。しかし程度の差こそあれ、両社がボイコット運動真っ盛りだった7月にFacebookとInstagramへ支払った広告料は、前月を上回っていた。またワーナーは金額をやや下げたが7月も引き続き広告を掲載し、TikTokはFacebookとInstagramの広告を縮小したものの、完全に止めた訳ではない。

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コーチの支払う広告料は大企業に遠く及ばないが、パーキンズCEOは自社の撤退が一定の影響を持つと信じている。「聞いたところでは、Facebookの収益の大部分を支えているのは大広告主でなく、我々のような中小企業なのだ」と彼は言う。「我々は、規模にかかわらず多くの企業が共に運動に参加していることを効果的に伝えられる、イメージキャラクターのようなものだ。」

それでも純利益を重視する会計士なら、コーチのボイコット運動への参加に反対したかもしれない。「Facebookは、ニッチな市場を相手にする我々のような企業でも広告を出せる数少ない場所のひとつだ」とパーキンズは言う。「おそらく我々の売り上げの4分の1を占める。我々が販売機会を失えば、誰かが仕事を失うかもしれない。

実際に、コーチがFacebookへの広告掲載を止めた時、直ちに売上に影響した。しかし広告の中断が自社の売上を減少させ、言論の自由を盾にとってボイコット運動が非難されるような状況の中、パーキンズは自分の下した決断を「いとも簡単な選択」だったと表現している。

「フェイクニュースやヘイトのメッセージを公然と拡散する人々」はFacebook上で容易に見つかる。「いったいどう対処すればよいのだろうか?」とパーキンズは問いかける。

Translated by Shoko Natori

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