BLMで再注目、名曲「奇妙な果実」の歴史的背景と今こそ学ぶべきメッセージ

ビリー・ホリデイとラプソディ(Photo by Paul Hoeffler/Redferns/Getty Images, Dave Kotinsky/Getty Images)


「奇妙な果実」再評価を決定づけたカニエ・ウェスト

7年前、カニエ・ウェストは「奇妙な果実」に最もきらびやかな光を投げかけた。彼は「ブラッド・オン・ザ・リーヴズ」にシモンのバージョンを取り入れ、『イーザス』で最も心を掴む瞬間のひとつをつくりだしたのだ。イーロン・ルットバーグは作家、ディレクター、ソングライターとして、この曲でウェストとコラボレートした一人。彼によると、「ブラッド・オン・ザ・リーヴズ」は、バスケットボール選手を現代の奴隷に位置づけるという議論の一部から生まれたのだという。「これはすごくパワフルだと思った」彼は回想する。「みんなすべてを持っている。けれども、渇望し続けている自由だけは持ってない。そういう着想だった」。



結果完成したのは、プロフェッショナルとしての問題、また私生活上抱える問題の双方にさいなまれるアスリートによって語られる一曲だった。「リスナーに富豪の人格と私的なトラウマを理解してほしいというのは、ありえない頼みだ。けれど、それはこのもっと大きな闘いに通じてもいる」ルットバーグは付け加える。「『奇妙な果実』は、恐怖を真正面から見つめたときに抱く感覚を表現する方法を探す歌だ。ニーナや原曲を汚したかったわけじゃない」

ミーアポル家は当初、ウェストの曲には困惑したと認めている。「ロバートと私は、『どうなってるんだこれ?』という感じだった」マイケルが回想する。ロバートは加えて、「そこから議論が始まった。みんなニーナ・シモンについて話し、この曲をカバーしはじめた。エイベルならちっとも気にしなかっただろう」


カニエ・ウェスト(Photo by Lloyd Bishop/NBCU Photo Bank/Getty Images)

Alpha Dataによると、今年の上半期、ウェストの「ブラッド・オン・ザ・リーヴズ」は、ホリデイのオリジナルの4倍近くストリーミング再生されたという。ミーアポル家は引き続き、この曲の使用料を受け取っている。著作権法が幾度か変更されたおかげで、「奇妙な果実」の歌詞とメロディは、1939年の著作権登録から98年後の2033年まで、パブリックドメインにならずに済む。この曲は過去22年間で30万ドルの使用料を生んでいる。ロバート・ミーアポルの収益の一部は、エイベル・ミーアポル記念ソーシャル・ジャスティス文学賞の設立に使われた。2017年、最初の受賞者は、ポエトリー・スラムの全国大会を複数回制した黒人詩人、パトリシア・スミスだった。

「奇妙な果実」が新たに重要性を帯びだしたという事実は、「悲しい、とても悲しいコメンタリーだ」とマイケル・ミーアポルは語る。「ジム・クロウ法を廃絶したのは1964年と65年だったはず。『最後の反ユダヤ主義者が死ぬまで、私はユダヤ人であり続ける』という言い回しがあるけれど、同じように、最後の人種差別主義者が死ぬまで、『奇妙な果実』は重要であり続ける。その最後の人種差別主義者がいまや合衆国大統領とはね」

●白人アクトが黒人を踏み台に ポップミュージックにおける「搾取と強奪」のシステム

From Rolling Stone US.

Translated by imdkm

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