ソーシャルメディアに君臨する陰謀論者、次なる呼びかけは「子どもたちを救え」

陰謀論ハッシュタグの変遷

「#SaveTheChildren」(亜種として「#SaveOurChildren」というのもある)は、ずいぶん前から各方面の陰謀論者が活用してきた。ハーバード・ケネディスクール付属ショーレンスタイン・センターの技術社会変化プロジェクトの上級研究員、ブライアン・フリードバーグ氏によると、エリート層の小児性愛者による世界的秘密組織を白日の下にさらさねばならない、という考えの萌芽は、2013年初期ごろから4chanの/pol/や/conspiracy/といった掲示板に巣食っていたという。

2017年に入ると「#pizzagate」(民主党の有力者がワシントンDCのピザレストランを隠れ蓑に児童売春組織を運営していたとする陰謀論)とセットで使われるようになり、2018年ごろからは「#WWG1WWGA」(Qアノンのキャッチフレーズ「我ら一丸となってともに進まん(where we go one, we go all)」)とも結びついた。8chan(現在の8kun)のQアノンの掲示板のスレッドでは、「家族と引き離された子供の(メディアの)言い分に異を唱え、#SaveTheChildrenを使って行方不明者や搾取された子供たちに光を当てる」という活動の一環だと説明されている。

フリードバーグ氏によると、この春「#SaveTheChildren」は一時息を吹き返した。ニューヨークのセントラルパークに設営されたCOVID-19患者用の野営病院は、実は人身売買された子どもを運ぶトンネルだ、と陰謀論者が言い出したためだ。だがFacebookやTwitter、Instagramなど各種プラットフォームで火が付き始めたのは7月も終わりのころ。国連の人身取引反対世界デーと同じ7月31日、ハリウッドで予定されていた抗議デモの大々的な宣伝キャンペーンのおかげといっていいだろう。陰謀論を展開する自称独立系ニュース番組Real Deal Mediaが立ち上げたとみられるChild Lives Matterと銘打ったこのデモのちらしには、「#SaveTheChildren」というハッシュタグが使われていた。一部のインフルエンサーは純粋に児童人身売買を知ってもらおうとデモを広めたていたが、悪意を持っていた人がいたのも明らかで、Pizzagateや反ワクチンのスローガンが書かれた看板を掲げる参加者の姿も大勢見られた。

ロンドンにある極右研究センターの博士課程研究員、アレクサンダー・リード・ロス氏によれば、こうしたデモはブラック・ライヴズ・マター運動のフレーズを勝手に拝借しようとする極右勢力の共同戦線だとみられる。ソーシャルメディア上には「#ChildLivesMatter」や「#BabiesLivesMatter」といったハッシュタグも出てきている、と同氏は指摘する。「状況を逆手にとって、ヒラリー・クリントン率いるリベラル派のディープステート結社に子どもたちが虐待されている、と抗議するのが彼らの目論見です」

Translated by Akiko Kato

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