Spotifyで生計立てるのは「夢のまた夢」 データから見える収入格差の実態

2020年3月5日、メキシコ、メキシコシティのナショナル・オーディトリアムで行われた2020 Spotifyアウォードに出席したJ. バルヴィン(Photo by Manuel Velasquez/Getty Images)

Spotifyが先ごろ発表した社内データによると、「100万人のクリエイターが同プラットフォームで生計を立てられるようにする」という同社の経営理念は、どう贔屓目にみても、この先1世紀は叶えられそうにない。

この数年、私はSpotifyの収支決算に感心を寄せ、感嘆し、驚かされてきた――だが、これほど当惑したことはいまだかつてなかった。

7月29日(水)、Spotifyは株主に向けて四半期定例決算公告を発表し、第2期の全世界の購読者数が800万人増えて1億3800万人に達したことを明らかにした。決算公告には驚愕の統計データが示されていた。「弊社の上位階層に属する――全ストリームの上位10%を占める――アーティストの数は急増し、前年の3万人から43%アップして、今や4万3000人を超えた」

数時間後、同じ報告書がSpotifyの投資家専用サイトに掲載された。ただし、微妙に変更が加えられていた。「弊社の上位階層に属する――全ストリームの上位90%を占める――アーティストの数は急増し、前年の3万人から43%アップして、今や4万3000人を超えた」

Spotifyに問い合わせたところ、2つ目のバージョン(10%ではなく90%のほう)が正しいことが確認された。すなわち、今やSpotifyの全ストリームの90%が4万3000人のアーティストでシェアされているということだ。

●これまでも「撤回」を繰り返してきたSpotify

企業のミスに難癖をつけるのは決して有益な時間の使い方とは言えないが、今回の場合は重要だ。複数のグローバルメディア媒体が10%という誤った数字を報じているからでもあるが、正しい数字(90%)がSpotifyの壮大なミッションステートメントの核になっているからでもある――2018年、CEOのダニエル・エク氏が投資家の前で発表して以来、同社は毎年決算報告の中でこのミッション・ステートメントを発表し続けている。「100万人のクリエイティブなアーティストに自らの作品で生活できるチャンスを与えることで、人類の創造性の可能性を解き放つ」という理念だ。

さて、実際に計算してみよう。

Translated by Akiko Kato

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