メタリカ『S&M2』を考察「ライブアルバムを超越した、バンドの成熟と探究心の証」

メタリカ(Photo by Anton Corbijn)


メタリカとオーケストラ、今だから成し遂げられた「真のコラボ」

あれから20年後の2019年、バンドは『S&M〜シンフォニー&メタリカ』開催20周年を記念した、新たなオーケストラ共演ライブを企画。20年という空白を経て迎えたこのライブ(および作品)には、前回と大きく異なる点がいくつかある。まず、マイケル・ケイメンが2003年に亡くなったことで、今回の『S&M2』ではエドウィン・アウトウォーターとマイケル・ティルソン・トーマスというクラシック畑の人間が指揮者を務めている。メタリカ側もベーシストがジェイソン・ニューステッドからロバート・トゥルヒーヨへと交代。『セイント・アンガー』(2003年)、『デス・マグネティック』(2008年)、『ハードワイアード...トゥ・セルフディストラクト』と3枚のオリジナルアルバムを発表しており、ライブで披露できる楽曲も増えた。

そういった事実に改めて時の流れを感じるものの、それ以上に筆者がこのライブ作品を観て聴いて驚かされたのは、この『S&M2』が前作『S&M〜シンフォニー&メタリカ』とアプローチが異なるという点。今作からはバンドがオーケストラ側に歩み寄り、一緒にひとつの作品を作り上げようとする強い意志が感じられるのだ。それはコンダクターがロック畑にも精通するマイケル・ケイメンから、クラシック畑の重鎮へと変わったことも大きいだろう。勝手知ったる人間との仕事ではなく完全にフィールドの異なる人間とのモノづくりだからこそ、メタリカ側が彼らを理解しようと相手のフィールドに足を踏み入れる。きっとこれは、まだ若かった20年前のメタリカにはできなかったことかもしれない。


Photo by Brett Murray

だから、2部構成で進行するライブの後半(第2部)ではオーケストラの演奏にメタリカが加わる「The Iron Foundry, Opus 19」や、ジェイムズ・ヘットフィールド(Vo, Gt)がギターを置いてオーケストラを背に歌う「The Unforgiven III」、ラーズ・ウルリッヒ(Dr)がコントラバス奏者とバトルを繰り広げる「(Anesthesia) - Pulling Teeth」と、前回にはなかった試みも登場する。さらには、オーケストラのみで演奏される「Scythian Suite, Opus 20 II: The Enemy God And The Dance Of The Dark Spirits」まで用意されているのだから、これが単なる「メタリカのライブにオーケストラが参加」という代物ではないことがご理解いただけるはずだ。

そういった2組の“一体感”はライブ映像からも伝わってくる。通常のメタリカのライブ同様、円形ステージ上にバンドを囲むような形でオーケストラが配置されているのだが、20年前には難しかったこのような演奏形態もテクノロジーの発達により実現させることができた。オーケストラ側からしたら普段のスタイルとは異なる形でやりにくさもあったかもしれないが、ここに関してはオーケストラがメタリカ側に歩み寄ったと受け取ることもできる。双方が相手のスタイルを理解し、その距離を縮めることで真のコラボレーションが実現したわけだ。

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