メタリカ『S&M2』を考察「ライブアルバムを超越した、バンドの成熟と探究心の証」

メタリカ(Photo by Anton Corbijn)


“記録”や“スピンアウト”を超越した『S&M2』の意義

演奏される楽曲には、20年前に披露されたものも少なくない。しかし、アプローチの変化がアレンジにも影響を及ぼし、同じオーケストラアレンジでも前作とは別モノを聴いている錯覚に陥る。例えば「For Whom The Bell Tolls」でのオーケストラの馴染み具合は前回以上だし、20年前にオーケストラとの共演を想定して用意された新曲「No Leaf Clover」も、今回のバージョンのほうが不思議と自然体なのだ。中でも注目すべきは10分にもおよぶ大作「The Outlaw Torn」だろう。20年前の共演では淡々とした原曲にオーケストラを被せただけで、個人的には特に惹かれるものはなかったが、今回のバージョンは「元からオーケストラありきで制作されたのでは?」と思えるほどメリハリの効いた完成度の高さを誇る。ジェイムズの歌もカーク・ハメット(Gt)のギターソロも水を得た魚のように、原曲以上に生き生きとしているのだから興味深い。

モダンなラウドロックへと接近した『セイント・アンガー』からの「All Within My Hands」も新たな形へと生まれ変わっている。メタリカが昨年配信リリースしたアコースティック・ライブアルバム『ヘルピング・ハンズ…ライヴ&アコースティック・アット・ザ・マソニック』(2019年)で披露されたアレンジが元になっているのだが、ストリングスなどが加わることでよりダークさが際立つスローバラードへと進化しているのだ。この曲を『S&M2』からのリードトラックに選んだあたりにも、バンドの今作に対する自信が窺える。「Confusion」や「Moth Into The Flame」「Halo On Fire」といった最新作『ハードワイアード...トゥ・セルフディストラクト』からの楽曲もオーケストラとの親和性は非常に高く、今回のバージョンのほうがオリジナルだと言われて信じる者も少なくないだろう。




そして、ここで改めて特筆しておきたいのが、作品ごとにタッチの異なる『ロード』『リロード』以降の作品/楽曲が、オーケストラとの共演/リアレンジによって一度丸裸になることで、実はすべて地続きなのだという事実に気づかされること。それが最初に述べた「その無数もの“点”がすべてつながり、ひとつの“線”になった。その“線”をベストな形で我々に届けてくれた」という発言の真意だ。そこに気づかせてくれたという意味でも、本作の担う役割は大きなものがある。

来年で結成40周年を迎えるというタイミングに、メタリカはバンドとしての成熟ぶりと、まだまだ尽きることない探究心が混在するこの作品を届けてくれた。単なる“記録”や“スピンアウト”と呼ぶには勿体ないほどに意欲的な本作は、だからこそ間違いなく『ハードワイアード...トゥ・セルフディストラクト』に続く4年ぶりの“ニューアルバム”なのだと再び力説して本文を終えたい。




メタリカ&サンフランシスコ交響楽団
『S&M2』
発売中 
【2CD+Blu-ray】 UICY-15876 / ¥7,000(税抜)
【2CD】 UICY-15877/8 / ¥3,000(税抜)
【Blu-ray】 UIXY-15038 / ¥4,900(税抜)
CD:日本盤のみSHM-CD仕様 / Blu-ray:日本語字幕付
※輸入盤のみ取扱い形態:Deluxe Box、4LP、DVD、2CD+DVD

試聴・購入:https://met.lnk.to/metallica-sm2

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