あの武装夫婦も登場、共和党全国大会で目撃した根深い差別意識

共和党全国大会初日の8月24日、ワシントンのアンドリュー・W・メロン・オーディトリアムからの収録演説で熱弁をふるうドナルド・トランプ・ジュニア(Photo by Susan Walsh/AP)

現地時間24日、米共和党全国大会の初日、スピーチの途中で元サウスカロライナ州知事のニッキー・ヘイリー氏はこう強調した。インド人の両親が「差別でつらい思いを味わう」のを見て育った幼少時代を掘り起こし、「いま民主党内では、アメリカが人種差別的だと言うのが流行っているようですが、それは嘘です。昔とは違います」と彼女は言った。「アメリカは人種差別の国ではありません」

一方でヘイリー氏は先のスピーチで、アメリカのパンデミックの惨状の原因を中国になすりつける共和党の演説者集団に加わった。「共産主義の中国が新型コロナウイルスをアメリカにもたらしました」とヘイリー氏は断言し、コロナウイルスのせいで前途洋々と思われていたトランプ政権下の経済実績が台無しにされた、と非難した。月党大会の収録パートでトランプ米大統領は、医療現場の人々とともに姿を現した。彼らの多くはCOVID-19から回復した人々だった。トランプ大統領は以前からウイルスを「カンフルー」と呼んでいたが、この日も医療従事者を前に、人種差別的なトーンを気持ち落とした程度でこう語った。「この中国ウイルスを撃退せねばならない」

党大会を通して、共和党は寛容の事例をひけらかしたが、化けの皮も剥がれ続けた。この日を始め、各州の代議員がドナルド・トランプ氏を正式に大統領選の代表候補者に再指名する中、メリーランド州の代表者は地下鉄道(南北戦争以前、奴隷が北部の州やカナダへ脱出するのを助けた組織)に州が関与した事実を取り上げたが、その後ふと口を滑らせ、メリーランド州は「2人の偉大な分離政策支持者」の故郷だと得意げに語った。

少なくとも党大会登壇者の1人は、嘘偽りのない言葉でアメリカにおける人種の躍進ぶりを語った。共和党で唯一の黒人上院議員、サウスカロライナ州のティム・スコット上院議員は、畑仕事をするためにやむなく小学校3年生で学業をあきらめた祖父が、連邦職員としての自分の晴れ姿を見届けた経緯を語った。「私の一家は一世代で、綿花畑から議会に上り詰めたのです」とスコット議員は述べた。だが他の面々は、はるかに冷笑的に人種問題を訴えた。同じく黒人であるジョージア州代表のヴァーノン・ジョーダン下院議員は、民主党と黒人有権者の関係を奴隷制度にたとえ、党大会の視聴者にこう語った。「民主党は黒人が精神的プランテーションから抜け出すのを望んでいません。我々は何十年も、何世代も、そうした状態を強いられてきたのです」

オブラートに包むことすらない場面もあった。2020年共和党全国大会の初日、一番の見せ場に登場したのはマクロスキー夫妻だった。ブラック・ライヴズ・マターのデモ参加者が高級住宅地を通り抜けようとした際、自宅前に立ちはだかり、武器を振り上げたセントルイスの弁護士夫婦だ。

【動画】豪邸の前でデモ隊に銃を向けたマクロスキー夫妻、この日は正装で出演

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE