音楽がもたらす享楽とは何か? 鳥居真道がJBに感じる「ブロウ・ユア・マインド感覚」

ここで、よっしゃ! 気合で変性意識状態に入っていこうや! というような根性論を打っても仕方がありません。例えば、魂の叫びが云々といったタイプの大仰だがぼんやりしている語り口に辟易していたからこそ、プラクティカルかつ細部へのフェティッシュなこだわりについて語ることをテーマとしていました。けれども、それは結局のところ、ブロウ・ユア・マインド感覚を味わうためのものです。

「神は細部に宿る」という言葉があります。JBの「Mother Popcorn」も非常に解像度の高いパフォーマンスによって成り立っているものです。細やかなコントロールの賜物だと言えます。けれども、フェチ的な細々としたこだわりの集積では、「Mother Popcorn」にはならないとも思います。人と一緒に演奏する限り、カオスに身を曝す必要があるからです。それはコントロールの埒外と言っても良い。そうしたカオス的な場に、脱主体化しつつ、すっと入っていくためにはやはり耳の解像度を上げなくてはなりません。それゆえに、徹底して細部にこだわる必要があります。そうした細部への執着に言及したのがこのモヤモヤリズム考だと言えるでしょう。そして、なぜリズムなのかと言えば、それが共振するものだからだし、より即物的なことを言えば、下半身にモヤモヤをもたらすからです。今回は「Mother Popcorn」を聴いて私のマインドがブロウしたため、こうした内容も相成ったといったところであります。



鳥居真道


1987年生まれ。「トリプルファイヤー」のギタリストで、バンドの多くの楽曲で作曲を手がける。バンドでの活動に加え、他アーティストのレコーディングやライブへの参加および楽曲提供、リミックス、選曲/DJ、音楽メディアへの寄稿、トークイベントへの出演も。Twitter : @mushitoka / @TRIPLE_FIRE

◾️バックナンバー

Vol.1「クルアンビンは米が美味しい定食屋!? トリプルファイヤー鳥居真道が語り尽くすリズムの妙」
Vol.2「高速道路のジャンクションのような構造、鳥居真道がファンクの金字塔を解き明かす」
Vol.3「細野晴臣「CHOO-CHOOガタゴト」はおっちゃんのリズム前哨戦? 鳥居真道が徹底分析」
Vol.4「ファンクはプレーヤー間のスリリングなやり取り? ヴルフペックを鳥居真道が解き明かす」
Vol.5「Jingo「Fever」のキモ気持ち良いリズムの仕組みを、鳥居真道が徹底解剖」
Vol.6「ファンクとは異なる、句読点のないアフロ・ビートの躍動感? 鳥居真道が徹底解剖」
Vol.7「鳥居真道の徹底考察、官能性を再定義したデヴィッド・T・ウォーカーのセンシュアルなギター
Vol.8 「ハネるリズムとは? カーペンターズの名曲を鳥居真道が徹底解剖
Vol.9「1960年代のアメリカン・ポップスのリズムに微かなラテンの残り香、鳥居真道が徹底研究」
Vol.10「リズムが元来有する躍動感を表現する"ちんまりグルーヴ" 鳥居真道が徹底考察」
Vol.11「演奏の「遊び」を楽しむヴルフペック 「Cory Wong」徹底考察」
Vol.12
クラフトワーク「電卓」から発見したJBのファンク 鳥居真道が徹底考察
Vol.13 ニルヴァーナ「Smells Like Teen Spirit」に出てくる例のリフ、鳥居真道が徹底考察


RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE