山本彩、配信ライブ「LIVE TOUR 2020 ~ α ~」アンコールで新曲初披露も

開演予定時刻の18時30分を少しだけ過ぎたころ、暗転していたステージ上に大きなスクリーンが現れ、その上を白い光が流動的に動きながら、不規則な形状を形作っていく。すると、ステージ上方からひと筋の光が差し、スタンドマイクの前に立つ山本彩の姿が映し出された。オープニングナンバーは、「イチリンソウ」。力強い意志を感じさせる歌声がホールに響いていく。「イチリンソウ」を歌い終えると、会場内に大きな歓声と拍手が巻き起こる。これは、彼女のFCを通して事前に募っていたファンの声と拍手をライブ用に編集し、当日の会場で実際に流したもの。ライブ中は、この“ファンの声と拍手”が随所にインサートされることによって、視聴者に、そして山本彩を始めとするステージ上のメンバーに、ライブならではの臨場感や一体感が生まれていくことになった。2曲目は、アコギをかき鳴らす山本が、ラウドなロックサウンドの中で激しい歌を聴かせる「棘」。続く「喝采」では、ドスを効かせた歌いっぷりで魅了する。息を切らしながらの短いMCを挟んで「unreachable」を披露したあとは、それまでの熱く激しい姿から一転し、「雪恋」ではしっとりとやさしい歌を聴かせ、「君とフィルムカメラ」では軽やかに弾けるパフォーマンスを見せてくれた。


Photo by 半田安政

そこからさらなる変化を見せたのが、幻想的な映像とライティングでつないだあと、「Homeward」から「feel the night」「stay free」と、メロウでグルーヴィーなナンバーが続いたセクションだ。特に「feel the night」と「stay free」では、しなやかでセクシーなダンスで魅せつつ、ラップも織り交ぜたステージを披露。「stay free」のパフォーマンス時には、スクリーンに映し出された複数の自身の白いシルエットのダンスと、見事にシンクロしてみせた。そして、バンドメンバーがそれぞれの個性を生かした演奏を聴かせたあと、この日最初のクライマックスが訪れる。デニム地を基調にした衣装に着替えてステージに戻った山本が、おもむろに「サードマン」の一節をアカペラで歌い始めたのだ。その歌声に、静かに、そしてゆっくりと重なっていくピアノとバイオリンの音色。やがてすべてのパートが音を奏で始め、「サードマン」の世界は一層の熱を帯びて、山本彩のキャリア史上屈指の名バラードの最新形を完成させた。「サードマン」は、これまでのライブでもポイントになってきた、ファンからの支持も高い楽曲だが、この日は“君は君でいて/止まらなくていいんだ 君はそのまま”と歌われる歌詞が、図らずも新しい価値観を模索しなければならなくなった今の状況も相まって、これまで以上に胸に迫ってきたのだった。

Rolling Stone Japan 編集部

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