639年かけて演奏されるジョン・ケージの超長尺曲、7年ぶりに新たな展開

John Cage ASLSPより

9月5日、ドイツのとある教会に多数の人々が集まった。彼らは前衛作曲家のジョン・ケージが作った639年かけて演奏される曲が、7年ぶりに変化する場面に立ち会ったのである。

2001年9月5日、ドイツのハルバーシュタットにある聖ブキャルディ教会に特製オルガンが搬入され、ケージの「オルガン2/ASLSP」の演奏を開始した。この曲は1980年代にケージが作曲した譜面8ページの楽曲で、曲の題名通り、可能な限りゆっくりと演奏することを目的としている。

【動画】音の変化は4時間にわたるライブ配信で中継された(3分31秒から音が鳴り始める)

この曲の当初の演奏時間は1時間程度だったのだが、ハルバーシュタットでの演奏時間は2640年に終了する予定だ。この楽曲の冒頭に短い無音状態があるのだが、ハルバーシュタットではこれが18カ月となり、2001年9月から2003年2月まで演奏された。

演奏開始から19年後の今年、15音符が弾かれることになっており、これは2013年10月5日に音が弾かれて以来だった。つまり、過去2527日間、聖ブキャルディ教会のオルガンは同じ音をずっと共鳴させていたことになり、この楽曲でこれまで弾かれた最長のロングトーンがこの音で、今後2071年まで弾かれる音符でも最長のロングトーンとなる。

「オルガン2/ASLSP」の演奏予定は日付が設定されていることもあり、ケージファンは5日に聖ブキャルディ教会に集合し、音がG#3とE4に変わる瞬間に立ち会った。この音の変化にはオルガン上部の2本の金属パイプも付け加えられた。次回の変化は2022年2月5日の予定だ。

「音は奏でられました。午後3時9分にブキャルディ教会内に新しい音が響き渡りました。カイ・ラウテンバッハをアシスタントに従えて、ライナー・O・ノイゲバウワーが取り仕切った厳粛な儀式で、ヨハンナ・ヴァルガスとジュリアン・レンブケの2人のオルガニストによってオルガン・パイプの再装備が完了しました」と、5日に「オルガン2/ASLSP」プロジェクトのオーガナイザーが投稿した。

そして「音が変わったということは、次の音に向かって歩みだしたということ。我々は次の音を楽しみにしています」とも。

Translated by Miki Nakayama

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