Phewが語る時代の閉塞感「絶望的にもなるけど、私は音楽を続けていく」

 
現実からは決して自由になれない

—アルバムに話を戻します。新曲が2曲収録されていますが「All that Vertigo」はどういったアイデア、テーマから生まれた曲ですか?

Phew:これは、自分でなにか作ろうと思っても、現実に背を向けて音楽作ろうと思っても、どうしても現実に影響を受けてしまうみたいな様を表現しました。一定のリズムもないし、アルバムのなかではいちばん聴きづらい曲なのかなと思いますけど、そういった表現を入れたかったんですよね。



—『VERTIGO KO』は2017年から2019年に作られた曲で、『Vertical Jamming』は2014年から2015年に作られた曲。つまり、今回の新作は2010年代後半の記録とも言えるアルバムですが、そこには「All that Vertigo」のように現実社会からの影響はありますか?

Phew:ありますね。現実からは決して自由になれない。それは宿命というか、受け入れないとしかたがないこと。(音楽制作の)出発点はそこからですね。

—では、2010年代後半というのはPhewさんにとってどんな時期だったのでしょうか?

Phew:ミュージシャンとしては、宅録を始めて楽しくてしようがないみたいな時期でしたね。その一方で、今まで一緒に仕事をしてきた人がたくさん亡くなって喪失感がすごかった。そして、世界情勢で言えば、震災から始まって現在に至るまで悪くなっていくだけ。何も改善されない。新しい可能性もいっぱいありますけど、これからのことはわからない。そのなかで生きているわけで。生活を続けていく、という意志はありますよ。それは義務感みたいなものじゃなくて、「生きる」っていうことがすべての前提にあるというかね。

—アルバムに収録された曲を聴いていると時代の閉塞感のようなものを感じさせますが、不思議と悲観的な感じにはならない。そういう閉塞感や不安に向き合う覚悟みたいなものを感じさせます。

Phew:今はミュージシャンだけじゃなく、音楽を巡る状況はほんとに大変だと思います。特にライブハウスとかクラブはね。そういう人たちにとって店を続けるというのは、きっと生活の一部というか、生きるということだと思うんですよ。続けるイコール生きる、みたいな。音楽を作るっていうのは、私の生活の一部。これからもっと難しくなっていくかもしれないけど、私は音楽を続けていく。他の選択肢はないですからね。とても絶望的な気分にもなるけど、今やっていることを続けていくしかない。でも、そういうものでしょ? 生きるっていうことは。

Photo by Masayuki Shioda

—まさにローリング・ストーンというか、転がり続けることの大切さ、ですね。そんななかで、アルバムの最後に置かれた新曲「Hearts And Flowers」には、どこか突き抜けた開放感というか、穏やかさみたいなものが感じられますね。


Phew:これは諦めの歌っていうか(笑)。諦念みたいなものを音で表現したつもりです。ここから、いま作っている新作に続くんです。このアルバムは通して聴いた時、40分弱、旅したみたいな感じになっているんです。明るい気分でスタートして諦めて終わり、みたいな。だけど、その旅はまた続きますよ、みたいなことで、いま新しいアルバムを作っています。

—その新作はどういうものになりそうですか?

Phew:結構、風通しが良い気がしますね。ギターとか弾いて割と楽しくやってます。来年くらいに何らかの形で出したいですね。CDなり、カセットなり、アナログなり。配信だけじゃなく、モノとして出したい。

—最近、配信が主流になりつつありますが、Phewさんにとってモノとして出すことは重要ですか?

Phew:うん、それは私には重要なことですね。やっぱり形にするというのはとても大事なことで。発表するだけだったら、いくらでも配信で出来るんですけど、断片だけじゃなく、まとめて形にするっていうのはとても大事だし、まとめる、編集するっていうのは人間が持っている知恵、良い知恵だと思うんですよ。

—良い知恵、ですか。

Phew:良い知恵であり、良い技術だと思います。あと、配信だったら最初から最後まで一人ですぐできるけど、モノとして出すためにはジャケットのデザインとか、いろんな人が関わるでしょ? 自分の作品に他人の手が入る。それも大事なことだと思いますね。




Phew "Vertigo KO" live stream
at Shibuya WWW
日時:2020年9月27日(日)19:00スタート
※2020年10月4日(日)まで視聴可能(チケットは同日17:00まで販売)
Stream Tickets:1500円

出演:
Phew "Vertigo KO" Set
VJ : rokapenis

ゲスト:
食品まつりa.k.a foodman VJ : Akihiko Taniguchi
TAWINGS

詳細・購入:https://phewstream.zaiko.io/e/vertigoko


Phew
『Vertigo KO』
発売中
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11297

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