スレイヤーのケリー・キングが選ぶ、不滅のメタル・アルバム10作

レインボー『バビロンの城門』(原題:Long Live Rock ’n’ Roll、1978年)


ロニー・ジェイムス・ディオは本当に素晴らしいシンガーだ(本当は“だった”と過去形にしなきゃいけないのが辛い)。レインボー時代の彼を見たことは一度もないが、ブラック・サバスにいたときに見た彼は、天賦の才能に恵まれたシンガーだった。ライブなのにレコードを聞いているようだった。それくらい上手かったんだ。最近、リッチー・ブラックモアが俺の中で大復活しているんだが、彼は素晴らしい曲を作っているのに過小評価されている。俺は『虹を翔る覇者』も「スターゲイザー」も気に入っているが、『バビロンの城門』は衝撃度が最も強いと思う。曲が変わるたびにガツンと頭を打たれる衝撃を感じるんだよ。最高の楽曲が収録されているし、ヤバいほどヘヴィだ。

収録曲は6曲か7曲で、俺が聞かない唯一の曲が最後のやつ。「キル・ザ・キング」「ロング・リヴ・ロックンロール」「ザ・シェッド」「バビロンの城門」……まったく、これなんて史上最強にクールな曲だ。

ブラックモアに関して言うと、俺はディープ・パープルが大好きだし、ディオが抜ける前のレインボーが大のお気に入りだ。ディオが抜けたあと、彼はグラハム・ボネット、ジョー・リン・ターナーと一緒にポップ路線に行こうとした。好きな曲もあるが、俺が好きなレインボーじゃなくなっていた。彼がディープ・パープルで達成したことがスラッシュに影響を与えたと評価しているよ。だから、ディープ・パープルのアルバムをこのリストから外すことは辛かった。もし入れるとしたら『マシン・ヘッド』だ。「ハイウェイ・スター」のリッチーはサバスよりも高速リズムを弾くことに夢中みたいだから。サバスが速くなるには相当な時間がかかったと思う。サバスのスピードが上がったのは、ディオがいた時期の「Neon Knights」あたりじゃないかな。この曲はトラッシュっぽいって思う。でもブラックモアはそれよりもずっと前に高速プレイに目覚めていた。スレイヤーは「ハイウェイ・スター」をカバーしたよ。過去の偉大な曲でほとんどの公演でプレイしたのは「ハイウェイ・スター」だけのはず。それくらい素晴らしい曲だよ。

でもブラックモアのアルバムを選ぶなら『バビロンの城門』。その理由は、ほぼ全曲が良い出来だからだ。




ヴェノム『Black Metal』(1982年)


80年代は音楽を見つける作業が今とは全く違っていた。メタル・フォースやケラング!といったメタル雑誌が、アメリカに届くまで待たなくちゃいけなかったんだ。そして、到着した輸入雑誌を見てやっと、アメリカでは扱われないバンドの情報を手に入れることができた。今ではインターネットを使えば世界中に情報が落ちている。とにかく、当時は近くにある家族経営の小規模レコード店に通うことが非常に重要だった。メタル雑誌がその店に並ぶと、すぐさま買って読み漁ったものだ。ヴェノムは、雑誌にの載った写真が「こりゃ最高だ」と思った。今では彼らの写真を見ると安っぽくて笑っちゃうのだが、多感な10代の俺は「この連中、イカしてる」って思ったね。

初期のスレイヤーはヴェノムに似ていた。俺たちは影響を受けやすかったし、自分探しの真っ最中だったし、たぶん俺たちはヴェノムとマーシフル・フェイトを足して2で割ったようなもので、そこにプリースト風味が少し、パンクが少しって感じだったと思う。俺たちの出発点がそれなのさ。

『Black Metal』を選んだ理由は、ヴェノムは活動を続けるごとに良くなったと思うからだ。史上最高のクソバンドが彼らだ。でも、『Black Metal』では彼らが良くなっているのがわかる。それに良い曲もある。確か、彼らはアルバムとアルバムの間にEPを出していた記憶があるんだが、「Bloodlust」はもともとEPに入っていたはずだ。今のリマスター版『Black Metal』には「Bloodlust」が収録されているし、この曲の出来が良くなっている。ヘヴィになっているんだ。みんなが彼らの音楽を……まあ、俺は彼らの音楽をスラッシュとは呼ばないけど、確実に高速メタルだと言える。あれ、違う、「黒いメタル」だ。彼らはあの頃、新語を作っていたようだ。



From Rolling Stone US.



【レジェンドが選ぶ「史上最高のメタル・アルバム」】
①オジー・オズボーンが選ぶ、究極のメタル/ハードロック・アルバム10作
②ジューダス・プリーストのロブ・ハルフォードが選ぶ、至高のメタル・アルバム10作
③メタリカのラーズ・ウルリッヒが選ぶ、最強のメタル/ハードロック・アルバム15作
④スレイヤーのケリー・キングが選ぶ、不滅のメタル・アルバム10作






Translated by Miki Nakayama

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE