デビュー40周年佐野元春 1980年代前半の楽曲を振り返る



田家:この曲がデビューアルバムに入っていたということで驚かれる方もいらっしゃるんだと思うんです。しかも15、16歳の頃にお書きになったと。

佐野:そうそう。15歳頃の頃にはもう曲を書き始めていました。手本がなかったので、欧米のソングライターの曲を聴いて学んだ。

田家:この「情けない週末」は、言葉の並べ方とか情景の描写という点で、それまでの日本の歌にはなかったんではないかと僕らは思っているんです。

佐野:そうかもしれないね。あの頃、シティポップと呼ばれている音楽があった。ただ、そのシティポップと呼ばれる音楽はたいてい外から眺めた街の歌だった。僕は東京育ちですから、内側から眺めた街の歌を作りたかった。都会的な音楽じゃなくて、都会そのものの音楽。そういう想いで作ったのが「情けない週末」ですね。

田家:それまでの日本語の歌は説明的になってしまう歌詞が多かったんですけど、この曲は説明しないで単語で情景を語っています。

佐野:カットバックだね。カットバックは、映画ではよく使われる。いくつかの違った情景をコラージュして、見る側にその意味を感じてもらうという手法。歌謡曲の世界にも昔からあった。山口洋子作詞、平尾昌晃作曲の「よこはま・たそがれ」だ。

田家:佐野元春さんの話に作詞家の山口洋子さんが書いた曲が出てくるとはなかなか思いませんよね。

佐野:何からでも影響されてる。

田家:その10代の時期に「情けない週末」の歌詞にある"<生活>という うすのろ"というのは、どういう感じ方だったんですか?

佐野:僕自身の実生活から出てきた言葉ではない。作家的な自分がイメージした言葉だ。

田家:でも今も10代の少年少女が恋に落ちてこの人と暮らしたいって思う時に、必ず足枷になるのは生活というものなわけで。この歌のリアリティは、今の若者にとっても普遍的なものであると思うんですよね。

佐野:そうだったらいいな。

Rolling Stone Japan 編集部

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